今週、加工肉の摂取が、がんリスクを高める、というニュースがありました。
新たな研究データが示されたということの紹介で、話題性があったようですが、
加工肉や赤身肉の摂取ががんと相関するというのは、特に目新しい話ではありません。
実際、10年以上前から、AICRなどがん予防指針では、赤肉や加工肉の摂取によるがんリスク増大が示されています。
(つまり、がん予防のための生活習慣として、加工肉や赤身肉は避けるように、という食事ガイドラインが示されています。)
さて、今日の私的なお勉強日記です。
今月の栄養学の専門ジャーナル(電子版)に、ベジタリアンと非ベジタリアンにおいて、ビタミンやミネラルの摂取状況を調べた調査研究が、スイスのグループから報告されていました。
(
Eur J Nutr. 2015 Oct 26.)
スイスでは、ベジタリアン食およびビーガン(ヴィーガン)食が人気となっていることから、
今回の研究では、
スイス居住のベジタリアンおよびビーガンの成人において、
ビタミンとミネラルの摂取状況が検証されました。
具体的には、
18歳から50歳の健常者から、
非ベジタリアン100名、
ベジタリアン100名、
ビーガン53名を対象に、
BMI、
血中のビタミンA, C, E, B1, B2, B6, B12,
血中の葉酸、パントテン酸、ナイアシン、ビオチン、βカロテン、
血中の鉄、マグネシウム、亜鉛、
尿中のヨウ素
が測定されました。
また、3日間の食事記録、身体活動、生活習慣も調べられています。
解析の結果、
3群のうち、
非ベジタリアンでは、
マグネシウム、ビタミンC、ビタミンE、ナイアシン、葉酸の摂取量が最低でした。
次に、
ビーガンでは、カルシウムの摂取量が少なく、ビタミンDとビタミンB12が境界域でした。
各栄養素別の解析で、
最も欠乏している人の割合が多いビタミンやミネラルは、
非ベジタリアン群では葉酸の58 %、
ベジタリアン群では、ビタミンB6とナイアシン(それぞれ58 and 34 %)
ビーガン群では、亜鉛の47 %
でした。
ビーガン群では、
ビタミンB12の摂取はほとんど認められませんでしたが、
サプリメントが広く利用されていることから、
いずれのグループでもビタミンB12欠乏は認められていません。
また、鉄欠乏の割合について、群間の差は認められませんでした。
以上のデータから、
ベジタリアン、ビーガン、非ベジタリアンでは、ビタミンやミネラルの摂取状況に大きな違いがあり、不足しやすい栄養素が異なることが見出された一方で、
サプリメントや栄養素強化食品が広く利用されているために、
実際には、ビタミンやミネラルはほぼ充足されている、
と推察されます。
これまでの多くの研究によって、ベジタリアン食摂取群では、非ベジタリアン食摂取群よりも、生活習慣病リスクが低いことが知られています。
ベジタリアン食による心血管疾患リスク低下作用
ベジタリアン食による血圧低下作用@メタ解析
なお、ベジタリアン食であれば何でも健康的になる、というわけではありません。
(例えば、野菜はナシで、パスタにチーズ、パンの組み合わせでも、ラクトオボにはなりますが。)
もちろん、栄養学的にバランスの取れた、適切なベジタリアン食を摂取することが重要です。
一般に、植物性食品の摂取が多いベジタリアン食では、ファイトケミカル・ポリフェノールの摂取が多く、抗酸化作用を介した生活習慣病の予防効果が想定されます。
北米の栄養士会が共同で発表した見解によると、「適切に準備されたベジタリアン食は、健康に有益であり、必要な栄養素を満たしており、いくつかの疾患の予防や治療にも利点がある」とされています。
実際、これまでの疫学研究によって、肉食をする人々に比べて、ベジタリアンでは生活習慣病が少ないことが示されています。
ベジタリアン食による具体的な効果として、肥満、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、高血圧、脂質異常症、糖尿病、前立腺がん、大腸がんの発症リスクが低下します。
また、日本人ベジタリアンを対象にした調査でも、ベジタリアンは、非ベジタリアンと比べて、体格指数(BMI)、血圧、血中総コレステロール値、中性脂肪値が有意に低いことが見出されています。
DHCでは、良質の植物性食品として、
次のような関連製品を取り扱っています。
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エクストラバージンオリーブオイル
ところで、最近の研究によって、糖質制限食・低炭水化物食よる減量・ダイエット効果や2型糖尿病での血糖コントロール改善効果が明らかとなっています。
また、
植物性たんぱく質および植物性脂質による心臓病リスク低減作用が知られています。
医学的に適切ではない糖質制限食のパターンとして、「糖質制限食・低炭水化物食では、‘焼き肉・ステーキ’食べ放題」があります。
動物性たんぱく質や動物性脂質の過剰摂取は、心血管疾患リスクを高めることが懸念されます。
植物性食品をベースにした糖質制限食・低炭水化物食による体重と脂質代謝への効果として、
エコアトキンスダイエットの減量と脂質代謝改善作用
といった研究もあります。
DHCでは、
肥満・糖尿病・アンチエイジング・ヘルシーエイジング(健康長寿)のための食事として、
「‘ゆるやか’糖質制限」(緩やかな糖質制限食・低炭水化物食)を推奨しています。
最新の科学的根拠を俯瞰すると、
「緩やかな糖質制限食・低炭水化物食」を基本とした食生活が、
「ヘルシーエイジング(健康長寿)」
「ダイエット(適正体重の維持)」
「アンチエイジング(抗加齢)」
に有用であると考えられます。
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