神経栄養学の専門ジャーナル(電子版)に、多発性硬化症患者におけるコエンザイムQ10の抗炎症作用を示した臨床研究が報告されていました。
(
Nutr Neurosci. 2014 Jan 10.)
多発性硬化症は、免疫系の関与する神経変性疾患の1種であり、
脳における神経変性に炎症が関与することが示唆されています。
今回の研究では、
多発性硬化症におけるコエンザイムQ10の作用が検証されました。
具体的には、
ランダム化二重盲検偽薬対照試験として、
再発と寛解を繰り返す多発性硬化症患者48名を対象に、
・偽薬投与群(n = 24)、
・コエンザイムQ10投与群(1日あたり500 mg, n = 24)
の2群について、12週間の介入が行われ、
投与前後で炎症関連マーカー(TNF-α, IL-6, MMP-9, IL-4, TGF-β)が測定されました。
45名が試験を完了しました。
解析の結果、
偽薬群に比べて、
12週間のコエンザイムQ10の投与によって、
TNF-α値の有意な低下、
(P = 0.003)
IL-6値の有意な低下
(P = 0.037)
が認められたということです。
また、
偽薬群に比べて、
コエンザイムQ10投与群では、
血中MMP‐9値の有意な低下も見出されています。
(P = 0.011)
なお、
IL-4 やTGF-β 値には有意な変化は認められませんでした。
以上のデータから、
多発性硬化症患者において、
1日あたり500mgのコエンザイムQ10投与による抗炎症作用が示唆されます。
今後、
臨床的意義の検証が期待される分野です。
コエンザイムQ10は、抗酸化作用やATP産生作用を有する機能性成分で、体内でも産生されます。
しかし、加齢とともに内在性コエンザイムQ10は減少し、生活習慣病や慢性疾患でも低下がみられることから、アンチエイジング分野で広く摂取が推奨されているベーシックサプリメントです。
コエンザイムQ10には、
酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)と
還元型(=ユビキノール,ubiquinol)があります。
従来、コエンザイムQ10サプリメントは、酸化型CoQ10(=ユビキノン)であり、
経口摂取した後、体内で還元型CoQ10に転換され、効果を示してきました。
近年、還元型CoQ10サプリメント(=ユビキノール)が供給できるようになり、
還元型CoQ10の有用性を示した研究が報告されるようになっています。
若年者では、従来型の
CoQ10サプリメント(酸化型CoQ10のユビキノン)で十分と思われますが、
中高年以上の年代では、
還元型CoQ10サプリメント(=ユビキノール)をベーシックサプリメントとして推奨できるエビデンスが整いつつあります。
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