今月の栄養学の専門ジャーナルに、カルシウムサプリメントの摂取と腎結石のリスクとの関連を検討したレビューが、米国の研究グループから発表されていました。
(
J Am Coll Nutr. 2008 Oct;27(5):519-27.)
これまでに報告された研究では、カルシウムの摂取と腎結石のリスクとの相関を示唆するものがあります。
(例えば、Women's Health Initiative (WHI)においてカルシウム摂取群での腎臓結石リスクのわずかな増加が認められたため、米国におけるカルシウムサプリメントの売り上げに影響がみられたことがあるようです。)
カルシウムサプリメントは、骨粗鬆症の予防目的で利用されることの多い成分です。
そこで、今回の研究では、閉経後の女性を対象にしたカルシウムサプリメント投与試験が解析され、疫学研究での腎結石リスクと比較が行われました
その結果、過去40年の間、閉経後の女性における結石症のリスクは増加傾向にあるが、発症率は報告者によって異なり、10万人あたり年間70例、190例、300例などと幅があります。
著者らは、この罹患率の差を生じた原因は明らかではないとしています。
その上で、ほとんどの研究データでは、食事由来あるいはサプリメント由来のカルシウムの摂取(高用量での摂取)による結石症リスクの増加は認められず、逆に、カルシウム摂取と結石リスクと間に負の相関が認められたということです。
厚生労働省の国民健康・栄養調査では、カルシウムの摂取量が少ないことが示されています。
(1日あたりの目標量600mgに対して、550mg前後で推移しています)。
そのため、食事に加えて、サプリメントの併用も選択肢の一つと考えられます。
(食事が基本という意見も相変わらずよく聞きますが、摂取不足というデータが示されている以上、現実的な対応が求められます。)
特に成長期の小児、高齢者、妊婦・授乳婦などではカルシウム不足になりやすいので積極的な利用が推奨されます。
なお、1日あたりの上限量(2,300mg)を超えて長期間摂取すると、腎臓結石発症のリスクを生じるというデータもあります。
過剰摂取に伴う腎臓結石のリスクに対しては、マグネシウムの併用で対応できます。
マグネシウムは、カルシウムの異所性沈着(腎臓など軟部組織への沈着)を抑制する作用をもっています。
カルシウムとマグネシウムの両方を含む
サプリメントが製品化されており、利用できます。