ピクノジェノールによるがん治療時の副作用軽減効果を示した臨床研究が、イタリアのグループから報告されていました。
(
Panminerva Med. 2008;50:227-34.)
ピクノジェノールは、フランス海岸松の樹皮抽出物で、多くのフラボノイド類を含み抗酸化作用を示すことが知られています。
抗がん剤投与による化学療法や放射線療法といったがん治療では、副作用の発現が問題になります。
今回の研究では、ピクノジェノールサプリメントの摂取が、がん治療時のQOL(生活の質)に影響を与えるかどうか、検討されています。
対象となったのは、外科手術を受け、全身状態は比較的良好な状態と考えられたがん患者です。
10日間から1ヶ月間の放射線治療あるいは化学療法を受けた後、1日あたり150mgのピクノジェノール摂取群と偽薬摂取群の2群間での比較が行われています。
その結果、放射線治療後にピクノジェノールを摂取した25名の患者では、偽薬群の21名に比べて副作用が減少したということです。
特に、口腔や咽喉の炎症および潰瘍の抑制(改善)、口腔と眼の乾燥の抑制(改善)といった効果が顕著に示されています。
その他、悪心・嘔吐、下痢、浮腫の頻度の低下も認められました。
次に、化学療法後にピクノジェノールを摂取した34名の患者では、偽薬群の30名に比べて、副作用の軽減に関して一定の効果が示されています。
特に、悪心、嘔吐、下痢、体重減少に対して顕著な改善作用があったとされています。
また、放射線療法と化学療法のいずれにおいても、ピクノジェノール摂取群では副作用に対して処方された医薬品の量が減少し、入院日数も減少したということです。
以上のデータから、ピクノジェノールは、がん治療時の副作用軽減作用を有することが示唆されます。
作用機序としては、ピクノジェノールの抗酸化作用や抗炎症作用が考えられます。
なお、この研究では、ピクノジェノール(の抗酸化作用)による抗がん作用への影響(減弱など)は検討されていません。
化学療法や放射線療法の施行中には、抗酸化作用のある成分の大量摂取は避けるという考え方が一般的です。
一方、がん治療施行後の副作用軽減を目的とした摂取であれば、医師の監視下にてピクノジェノールを利用するという選択肢もあると考えます。
今回の研究は、予備的な臨床研究ですので、今後の検討が期待される分野です。