今月の栄養学の専門ジャーナルに、アディポネクチン遺伝子の個人差が、摂取した食事によるインスリン感受性への影響に違いを生じるという研究が、米国とスペインのグループから発表されていました。
(
J. Nutr. 2008 138: 1609-1614.)
脂肪細胞から分泌されるホルモンの1種、アディポネクチンは、インスリン感受性の改善、動脈硬化抑制といった働きを示します。
脂肪細胞で産生されるホルモンの中で、善玉ホルモンの代表として知られています。
これまでの研究では、アディポネクチンの遺伝子に見出される個人差が、2型糖尿病のリスクやインスリン抵抗性と関連していることが報告されてきました。
今回の研究では、アディポネクチン遺伝子の個人差が、脂質摂取時のインスリン感受性に影響を与えるかどうかが検討されています。
健康な被験者59名(男性30名、女性29名)を対象に、3種類の食事がそれぞれ4週間投与され、アディポネクチン遺伝子の相違(-11391 G > A, -11377 C > G, 45 T > G, 276 G > T)によるインスリン感受性への影響が測定されました。
用いられた試験食は、飽和脂肪酸の豊富な食事(38%脂質、20%飽和脂肪酸)、炭水化物の豊富な食事(30%脂質、55%炭水化物)、単価不飽和脂肪酸の豊富な食事(38%脂質、22%単価不飽和脂肪酸)の3種類です。
(ランダム化クロスオーバー法。)
その結果、特定の遺伝子変異(-11377 C > G)を有する男性では、飽和脂肪酸食から単価不飽和脂肪酸食や炭水化物食に変更した際に、インスリン感受性の有意な変化が認められたということです。
なお、この変化は、女性では認められていません。
また、その他の遺伝子多型(-11426 A > G, 45T > G, 276 G > T)では、特に有意な変化は示されませんでした。
以上のデータから、脂質の種類や炭水化物の割合が異なる食事を摂取した際、アディポネクチンの遺伝子多型(個人差)によってインスリン感受性に違いが生じると考えられます。
今回の研究のような、摂取する食事や栄養素の影響が、遺伝子のタイプ(個人差)によって異なるという研究(遺伝子と栄養素の相互作用に関する研究)がさらに進展すれば、個人の体質に合わせた、より効率的な食事療法やサプリメントの使用が可能になり、テイラーメイドのサプリメント療法が実現すると思われます。
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でも、う〜ん、、、先生、なんだか難しい内容で頭痛がしそうですね。
もう少し噛み砕いて一般庶民にも理解しやすい内容にしていただけるととってもうれしいです。