今月の栄養学の専門ジャーナルに、苦瓜(ニガウリ)の作用メカニズムを検討した基礎研究が報告されていました。
(Br J Nutr. 2008 Oct;100(4):751-9.)
ニガウリ(Momordica charantia)は、食用に用いられる他、伝統医療では未熟果実の抽出物/果汁が糖尿病に対して利用されてきました。
これまで、基礎研究を中心に、ニガウリによる糖尿病改善作用が示唆されています。
糖尿病の病態であるインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)では、肝臓におけるインスリン受容体のリン酸化の低下、細胞内分子であるIRS-1やIRS-2、PI3Kのリン酸化の低下などが知られています。
また、ニガウリ抽出物は、肝細胞培養系においてapoBやTAG合成を阻害することが示されています。
今回の研究では、高脂肪食投与動物を用いて、ニガウリ抽出物による肝臓でのインスリンシグナル伝達への影響および脂質代謝への作用が検討されました。
標準食投与群(対照群)、高脂肪食投与群、高脂肪食+ニガウリ併用群の3群において比較された結果、ニガウリは、耐糖能の改善作用に加えて、血漿apoB-100やapoB-48を低下させ、細胞内シグナル伝達におけるリン酸化にも影響を与えたということです。
以上のデータから、ニガウリによる糖尿病改善作用が示唆されます。
ただし、これは基礎研究ですので、臨床的意義の検討が必要でしょう。
今後の研究進展が期待される分野です。
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