栄養学の専門誌に、プエラリンによるアロマターゼ発現抑制作用を示した基礎研究が報告されていました。
(Food Chem Toxicol. 2008, PMID: 18848966.)
プエラリン(puerarin)は、イソフラボン類の1種で、植物に含まれるエストロゲン様物質です。
サプリメントでは、タイの伝統医療で用いられてきたハーブであるプエラリア・ミリフィカの成分として知られています。
プエラリア・ミリフィカを含むサプリメントは、女性特有の症状改善などを目的として利用されます。
アロマターゼは、アンドロゲンをエストロゲンに変換させる酵素であり、閉経後ホルモン感受性乳癌の増殖に関与すると考えられます。
(そのため、アロマターゼ阻害剤は、閉経後乳がん治療剤として用いられます。)
さて、今回の研究では、培養細胞系を用いて、プエラリンによるアロマターゼP450に対する作用および細胞内情報伝達物質に対する影響が調べられました。
その結果、Pueraria lobata由来のプエラリン投与によって、アロマターゼ(P450)の有意な発現低下(mRNAおよびタンパク質)を認めたということです。
(なお、今回の研究グループは、プエラリンが子宮内膜症に伴う症状を改善するという予備的な臨床データを報告しているようです。)
また、プエラリンによるc-jun遺伝子発現の抑制も示されました。
論文著者らは、プエラリン作用における細胞内分子としてc-junやAP-1の関与の可能性を考察しています。
エストロゲン様作用を有するイソフラボン類については、有効性と安全性のバランスに関して議論が続いています。
今後の研究成果が期待される分野です。
なお、植物エストロゲン活性の評価方法についての検討も必要です。
最近発表された論文でも、in vivoおよびin vitroでの科学的評価法に関する考察が行われています。
(例:Genes Nutr. 2006 Sep;1(3-4):143-158.「Tools to evaluate estrogenic potency of dietary phytoestrogens:A consensus paper from the EU Thematic Network "Phytohealth" (QLKI-2002-2453).」)
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