サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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統合医療と日医 [2010年04月01日(木)]
今日,日本医師会(日医)の会長選挙があり,3選を目指した現職が破れた,というニュースがありました。


政権政党に近い候補者が選ばれたようです。



ところで,日医は,先月(3月10日)の定例記者会見で,統合医療に反対する,という主旨の発表をしています。



ただ,具体的な内容をみると,日医は統合医療について理解していない,ということを露呈したという印象です。


統合医療と代替医療の区別がついていないようですし,医療制度の問題である混合診療や国家資格拡大といった,本質的ではない推測に基づいて議論を混乱させています。


また,予防医療や医療費削減に結びつけた批判も,まったく的はずれです。



統合医療では,1次予防,あるいは0次予防といったことがいわれます。

一方,日医のビジネスモデルでは,1次予防や0次予防では収入になりませんので,2次予防や3次予防の話です。




日医の記者会見は,1月末の総理大臣の施政方針演説を受けた政治的な意図があったのかもしれません。




しかし,統合医療の理念は,

--患者本位の医療

--個別化医療(テイラーメイド医療)

--全人的医療(ホリスティック医療)

の3つを特長としています。


したがって,各論では議論の余地があるにせよ,総論の段階で反対する理由が不明です。

(日医は,個別化医療や全人的医療を否定するのでしょうか?)






世界の現状を見るとき,統合医療の分野で,日本は欧米にもアジア諸国にも後れを取っています。

(もちろん,日本のほうが優れた分野はたくさんありますが。)



この10数年の間に,欧米や日本以外のアジア諸国は,

代替医療(Alternative medicine)についての現状把握と分類

→補完代替医療(CAM)と伝統医療を研究対象として検証

→CAMの科学的根拠の構築と実証研究

→CAMの一部を統合医療として取り入れて実践,

という流れにあります。






なお,日医の記者会見に限らず,統合医療に対する批判として,あやしげなものが含まれているのでは,という誤解があります。


確かに,分類として,代替医療と総称する場合には,科学的根拠が十分ではないもの,(一見)あやしげなものも含まれてきます。


しかし,統合医療の推進という場合には,根拠のないもの,怪しげなものは排除されます。



これらのあやしげなものというのは,療法そのものだけではなく,施術者という‘人’の問題であることも考えられます。

例えば,機能性食品素材・サプリメントは,研究の知見が集積され,科学的根拠が構築されつつあります。

つまり,機能性食品素材・サプリメント・健康食品は,あやしいものではありません。

一方,健康食品を売っている人たちの中にあやしい人たちがいるかもしれません。

徒手療法である整体・カイロプラクティックの分野も同様です。





その他,「科学的根拠がない=効かない」というわけではないことにも注意が必要です。

化学的に合成された薬剤の効果を判断する際には,ランダム化二重盲検比較試験がゴールドスタンダードであり,この方法で検証できる場合には話は比較的容易です。

しかし,CAMの分野では,RCTによる検証ができない場合も少なくありません。

また,科学的に誤った方法を対象とした例として,鍼治療の検証に用いられた偽鍼があります。

徒手療法でも,二重盲検ランダム化比較試験に基づく対照群の設定は困難です。観察研究や定性的研究,介入試験での一貫性も重視されます。

その他,遠隔療法やエネルギー療法になると,方法論でのブレイクスルーが必要でしょう。


(なお,エネルギー療法の分野では,擬似科学との区別も重要です。)


効果の有無という場合,実薬による介入の効果か,プラセボ効果か,という2種類しか認識していない,稚拙な議論を効くことがあります。

しかし,統合医療の分野では,研究方法についてのディスカッションは,はるかに進んでおり,医薬品の効能効果を検証するRCTしか知らない人たちとは議論の水準が違うと感じます。





日医の定例記者会見での予防医療云々についての議論に戻ります。


統合医療では,健康増進/疾病予防のための啓発や介入方法が重視されます。


これまでの医療でも,予防が重要といってきましたが,単なるお題目になっており,実践は不十分です。

(前述のように,統合医療では1次予防から考えますが,現在の医療のビジネスモデルでは2次予防か3次予防でないと儲からないしくみです。)



たとえば,食事や運動での介入で大きな成果が期待できる2型糖尿病およびその予備軍については,未病の状態での予防や改善対策が不十分で,結果的に膨大な医療費が費やされています。

糖尿病の診療ガイドラインは,単なる薬の使い方の実用書のようです。


もちろん,優れた医薬品の恩恵を受ける人も少なくありませんが,2型糖尿病のように,簡単な予防策で大きな費用対効果が期待できる分野も多くあります。



食事や運動で予防が可能なタイプの)患者が増える

→(食事や運動といった手段ではなくて)画期的な(?)医薬品が増える

→(それらの医薬品を処方することが仕事の)医療従事者が増え学会も繁盛する,


という医療界のビジネスモデルには疑問を感じます。



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医療関係者のための健康食品情報サイト【DHCサプリメント研究所】
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