今月の薬理学の専門ジャーナルに,γトコトリエノールの前立腺がんに対する作用を検証した基礎研究が,シンガポールのグループから報告されていました。
(
Pharmacology. 2010 Apr 7;85(4):248-258.)
γトコトリエノールは,ビタミンEの1種で,前立腺がん細胞に対する抗がん作用が知られています。
今回の研究では,
in vivo系において,外因性γトコトリエノールの薬物動態,およびアンドロゲン非依存性前立腺がんに対するγトコトリエノールの作用が検証されました。
前立腺がん細胞に対する作用は,γトコトリエノール単独投与時と,ドセタキセル(docetaxel)との併用投与時について,細胞増殖やアポトーシスなどを指標として調べられています。
腹腔内投与後,γトコトリエノールは血中から速やかに消失し,前立腺がん細胞に選択的に集積が認められました。
また,2週間のγトコトリエノール単独投与によって,腫瘍組織の有意な縮小が示されています。
さらに,γトコトリエノールとドセタキセルの併用によって,腫瘍増殖の有意な抑制が認められたということです(p < 0.002)。
γトコトリエノールによって誘導された抗がん作用は,細胞増殖の抑制(関連マーカーKi-67やId1),がん細胞のアポトーシス増加(cleaved caspase 3やpoly(ADP-ribose) polymeraseを指標)としても示されています。
以上のデータから,γトコトリエノールは,単独投与で前立腺がんに対する抗がん作用を示す他,化学療法との併用による補完療法としても有用であることが示唆されます。
今後,臨床的意義の検討が期待される分野です。
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