今月の生薬学の専門ジャーナル(電子版)に,田七人参による骨粗鬆症抑制作用を示した基礎研究が,中国のグループから報告されていました。
(
J Nat Med. 2010 Apr 8.)
田七人参(学名
Panax notoginseng)とは,中国伝統医学で長く用いられてきた生薬です。
田七人参は,高麗人参(朝鮮人参)と同じくウコギ科ニンジン属の生薬ですが,高麗人参とは,有効成分の種類や含有量に違いがあるとされます。
田七人参の有効成分として,サポニン配糖体に分類されるジンセノサイド類が知られています。
これらのジンセノサイドの含有量は,高麗人参よりも多いとされます。
今回の研究では,更年期障害・骨粗鬆症モデルラットを用いて,田七人参由来サポニンによる作用が検証されました。
具体的には,
--正常対照群
--卵巣切除+水投与群(5 ml/kg/day, p.o.)
--卵巣切除+田七人参サポニン投与群:用量の違いにより3群(75, 150, 300 mg/kg/day, p.o.)
--卵巣切除+ nilestriol(医薬品/ホルモン剤)投与群 (1 mg/kg/week, p.o.)
の各群にて比較が行われています。
13週間の介入試験の結果,卵巣切除群に比べて,田七人参サポニン投与群では,卵巣切除(更年期障害モデル)による骨密度減少の抑制(腰椎と大腿)が認められました。
また,構造バイオメカニクス特性の有意な向上,骨梁微細構造の改善も示されています。
さらに,血中alkaline phosphataseの上昇と尿中deoxypyridinolineの減少が認められたことから,田七人参サポニンによる骨代謝調節作用は,骨形成の促進と骨吸収の抑制によると考えられます。
田七人参サポニンは,子宮の肥大を生じることなく,骨密度および骨強度を改善したことから,更年期以後に生じる骨粗鬆症に対する補完療法としての可能性が示唆されます。
今後,臨床的意義の検証が期待される分野です。
------------------------------------------------------------------
医療関係者のための健康食品情報サイト【DHCサプリメント研究所】
------------------------------------------------------------------