今月の神経病学の専門ジャーナル(電子版)に,多発性硬化症の症状に対するスポーツクライミングとヨガの効果を示した予備的な臨床研究が報告されていました。
(
Clin Neurol Neurosurg. 2010 Apr 4.)
多発性硬化症患者では,うつ状態や認知機能障害,疲労感などがQOLの低下をもたらします。
今回の研究では,スポーツクライミングとヨガによる,筋肉の痙直,認知機能,気分,疲労感への影響が検証されました。
(スポーツクライミングとヨガは,一連のストレッチ運動を伴う有酸素運動と考えられます。)
具体的には,26歳から50歳の多発性硬化症患者20名を対象に,無作為にスポーツクライミングあるいはヨガのグループに分けられ,痙直,認知機能,疲労が10週間の介入プログラムの前後で評価されました。
(患者は,EDSS(多発性硬化症の神経症状に関する評価)が6以下,EDSSpyrが2以上。)
その結果,まず,痙直については,両群とも有意な変化は示されませんでした。
スポーツクライミング群ではEDSSpyrの25%低下(p=0.046)が認められ,
ヨガ群では注意力指標の有意な改善(p=0.005)が認められました。
また,スポーツクライミング群では,疲労感の有意な減少も示されています(p=0.015)。
(ヨガ群では有意差なし。)
なお,気分に対しては,両群とも有意な変化は認められていません。
以上のデータから,スポーツクライミングおよびヨガは,多発性硬化症に伴う症状の一部に対する改善効果が期待される補完療法です。
今後,さらに質の高い臨床研究による検証が求められます。
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