ウイルス学の専門ジャーナルに,エキナセアのインフルエンザウイルスに対する作用を検証した基礎研究が報告されていました。
(
Virol J. 2009 Nov 13;6(1):197.)
エキナセアは,北米原産のハーブで,米国では風邪やインフルエンザの初期に対して頻用される定番サプリメントです。
これまでの研究では,エキナセアによる風邪の予防や症状軽減,罹病期間短縮といった作用が示されてきました。
さて,インフルエンザに関しては,新型インフルエンザ(S-OIV 起源のH1N1)対策が実施されており,ワクチンや抗インフルエンザ薬といった選択肢があります。
ただ,ワクチンは副作用もあり万能ではなく,米国では摂取に対する反対意見がメディアをにぎわせており,抗インフルエンザ薬(oseltamivir)では耐性ウイルスが知られています。
そのため,インフルエンザに対する他のアプローチとして,生薬/ハーブが注目され,実際に利用されていますが,新型インフルエンザに対する効果は十分には検証されていませんでした。
そこで,今回の研究では,エキナセアによる新型インフルエンザへの作用が検証されました。
実験として,エキナセア抽出物(
Echinacea purpurea,Echinaforce)を用いて,新型インフルエンザであるヒトH1N1-type IV,高病原性鳥インフルエンザIV (HPAIV)のH5と H7型,ブタ由来インフルエンザウイルス(S-OIV, H1N1)に対する抗ウイルス作用が測定されています。
具体的には,経口投与による濃度に準じて,培養細胞系を用いて,ウイルス感染(受容体へ結合,細胞への侵入)やウイルス複製に関する測定が行われた結果,エキナセアによる処理によってH5N1での耐性は認められませんでした。
一方,タミフルでは,耐性ウイルスの発生が認められています。
これに対し,エキナセアは,タミフル耐性ウイルスにも野生型ウイルスにも同等の抗ウイルス作用を示したということです。
さらに,H5N1 HPAIVでは,感染前のエキナセアとウイルスの接触がウイルス複製への阻害作用を最大にするというデータになっています。
その他,赤血球凝集試験によると,エキナセアによってウイルスの受容体結合活性が阻害されたことから,ウイルスの細胞内への侵入が抑制されることが示唆されます
以上のデータから,論文著者らは,エキナセア標準抽出物は,通常の経口摂取による推奨量/摂取目安量にて,新型インフルエンザを含む各種のインフルエンザに効果を示すと考えられ,費用対効果の高い選択肢の一つである,と考察しています。
高価な抗インフルエンザ薬やワクチンの効果を否定するわけではありませんが,(今回の研究だけではなく)エキナセアにも十分なエビデンスがありますので,インフルエンザ対策の選択肢の一つと考えられると思います。
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