今日のニュースで,
行政刷新会議の事業仕分け作業によって,漢方薬の保険適用が見直しの対象となり,医療用漢方薬が保険適用から外されるという方針が示されたことに対して,反対署名が27万人分,提出された,
という話題がありました。
薬局で買える一般用医薬品(OTC医薬品)として購入可能な漢方薬については,健康保険を適応する必要はない,といった議論に基づく方針のようです。
先日,東大で開催された学会でも,日本東洋医学会の保険担当理事の先生が,事情を説明して,参加者に反対署名への協力を求めていました。
確かに,医療用漢方薬を保険適応外とすると,患者の自己負担になるため,国庫負担の軽減になるかもしれません。
しかし,統合医療・伝統医療・補完代替医療の分野における国際的な動向を見ると,自国の伝統医療を世界に発信しようという各国の明確な意図が感じられます。
もっとも顕著なのは中国です。
中国は非常にアグレッシブに,TCM(中国伝統医学)を世界に広めようとしており,政府が協力にバックアップしています。
このような状況で,国民皆保険制度をとる我が国において,独自の伝統医療である漢方で用いられる漢方薬が保険適応から外される方針,というのはかなり違和感があります。
中国だけではなく,例えば,インドは,アーユルヴェーダ専門の部局を保健省に設置していますし,韓国にも韓医学の国立研究施設があります。
その他,東南アジア各国も伝統医療を保護し,研究を推進する施策をとっています。
漢方が独自の伝統医療である我が国では,実は,漢方薬の原材料の8割程度を中国などに依存しています。
漢方薬の原材料となる薬用植物については,輸入ではなく,国産に切り替える必要もあるでしょう。
一次産業における代替の可能性として,タバコからの転用が考えられます。
禁煙を推進するのは,国民の健康保持のため,医療費削減のため,当然として,タバコを増税する場合,タバコ農家への補償が問題になります。
栽培条件の検証などをクリアする必要がありますが,商品価値の高い漢方薬の原材料を代わりに栽培する,という施策が可能でしょう。
これまでも何度か,漢方(あるいは漢方薬)は何度も危機的な状況になってきました。
今回は,事業仕分けの段階での方針であり,政府の最終的な決定ではありません。
仕分け作業全体は総論として私も評価していますが,各論では議論もあると思います。
諸外国の状況を考慮すると,日本も,独自の伝統医療である漢方および漢方薬を,積極的に評価し,国策としての取り組みが必要と思われます。
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