今月の栄養学の専門誌に、オメガ3系脂肪酸の供給源としての亜麻仁油と魚油の比較を行った研究が、北米のグループから報告されていました。
(Am J Clin Nutr 2008 88: 801-809.)
近年の研究によって、DHAやEPAといったオメガ3系脂肪酸が、動脈硬化抑制作用や抗うつ作用など多彩な働きを有することが示されています。
一般に、青魚がDHAやEPAの豊富な食材として知られており、オメガ3系脂肪酸の供給源として魚油サプリメントが利用されます。
一方、体内の代謝経路では、アルファリノレン酸がEPAおよびDHAの前駆体であることから、魚類の摂取が少ない場合の代替サプリメントとして、亜麻仁油(フラックスシードオイル)などが推奨されることがあります。
ただし、体内では、アルファリノレン酸からEPA,DHAへの転換効率が低いため、臨床的に有意な量が摂取できるかどうか、議論が続いています。
そこで、今回の研究では、被験者62名を6群に分け、亜麻仁油(1.2g、2.4g、3.6gの3種類の用量)、魚油(0.6g、1.2gの2種類)、サンフラワー油(対照群、1g)の3種類の脂質を12週間投与し、脂質代謝が検討されました。
赤血球中のDHAおよびオメガ3系脂肪酸を測定した結果、魚油摂取群では投与開始から迅速な増加が有意に認められています。
また、2.4gおよび3.6gの亜麻仁油摂取群では、EPA、DHAおよびオメガ3系脂肪酸の有意な増加が認められたということです。
以上のデータから、アルファリノレン酸を含むサプリメントの摂取によって、EPAおよびDHAの摂取時と同程度の脂質バランスを達成できることが示唆されます。
このときに必要なアルファリノレン酸の摂取量は、通常の食生活にサプリメントなどを併用することで十分に得られる量であることから、魚類を摂取しない場合でもDHAやEPAの効果を得ることができると考えられます。
(なお、EPAやDHAの前駆体であるという以外に、アルファリノレン酸には、独自の作用もあると考えられます。サプリメントの研究では、アルファリノレン酸としての投与による働きも報告されています。) |