今月の応用生理学の専門ジャーナル(電子版)に,L-シトルリンサプリメントの経口摂取によるアミノ酸代謝への影響を検証したヒト臨床研究が,スペインのグループから報告されていました。
(
Eur J Appl Physiol. 2010 May 25.)
L-シトルリンは,スイカ(西瓜)圧搾汁から単離されたアミノ酸の1種で,スイカ(学名
Citrullus vulgaris)にちなんでシトルリンcitrullineと命名されました。
L-シトルリンの機能として,NO(nitric oxide,一酸化窒素)産生促進作用や抗酸化作用が知られています。
また,L-シトルリンは,尿素の生合成回路に関与します。
健康食品素材としての
L-シトルリンでは,NO産生を介した血管拡張作用,動脈硬化抑制作用,抗酸化作用,抗疲労・強壮作用といった訴求が行われています。
消耗性運動では,代謝ホメオスターシスに影響を生じ,アミノ酸の異化,L-アルギニンの制限といった結果をもたらします。
L-シトルリンの経口投与は,血中L-アルギニン値の増加,NO-依存性シグナルの促進を生じることが知られています。
さて,今回の研究では,L-シトルリンサプリメントの経口投与によるアミノ酸代謝への影響が検討されました。
具体的には,アスリート(cyclist)男性17名を対象に,6グラムのL-シトルリン(L-シトルリンリンゴ酸塩)が,137kmサイクリング運動の2時間前に投与されています。
競技開始時,競技終了15分後,3時間後の3点においてアミノ酸代謝関連指標が測定された結果,消耗性運動によって,血中の必須アミノ酸の有意な低下が認められ,非必須アミノ酸は増加傾向を示しました。
L-シトルリンサプリメント(L-シトルリンリンゴ酸塩)を投与した群では,運動前の値に比べて運動後において,血中のシトルリン,アルギニン,オルニチン,尿素,クレアチニンなどの値が有意に増加し,イソロイシン値が有意に低下しています。
インスリン値は,両群において運動後に有意(p < 0.05)に増加し,3時間後に投与前値に戻っています。
成長ホルモンは,両群において運動後に増加し,特に,シトルリンサプリメント投与群において顕著な増加(p < 0.05)が認められています。
以上のデータから,消耗性運動前のL-シトルリンサプリメントの摂取は,運動中の分岐鎖アミノ酸の利用を促進し,クレアチニン・オルニチン・尿素などのアルギニン由来の代謝産物の産生を増加させる働きが示唆されます。
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