酸化還元研究の専門ジャーナルに、還元型コエンザイムQ10(CoQ10)による線維筋痛症に対する効果を示した臨床研究が、横浜市立大学のグループから報告されていました。
(
Redox Rep. 2013;18(1):12-9.)
線維筋痛症は、全身の疼痛を主訴とする原因不明の難治性疾患です。
コエンザイムQ10は、体内で産生される成分ですが、加齢により減少します。
抗酸化作用とATP産生作用を介した生活習慣病予防効果が知られており、アンチエイジング分野では基本となるサプリメントです。
また、いくつかの慢性疾患や生活習慣病でも、内在性コエンザイムQ10の低下が認められます。
コエンザイムQ10は、細胞内のミトコンドリア呼吸鎖で作用する抗酸化成分です。
線維筋痛症(fibromyalgia)患者では、内在性コエンザイムQ10の低下が示されています。
さて、今回の研究では、線維筋痛症患者における酸化還元状態が検証されました。
具体的には、
若年の線維筋痛症患者10名と、
健常対照群67名を対象に、
酸化型コエンザイムQ10(Co10)、還元型CoQ10、コレステロール値などが測定されました。
解析の結果、
遊離コレステロール値とコレステロールエステルは、
対照群に比べて、
若年の線維筋痛症患者では、有意に増加していました。
したがって、線維筋痛症では、脂質異常症が示唆されます。
この時、
正常対照群に比べて、
線維筋痛症患者では、
ユビキノール10(還元型CoQ10)値は有意に低下しており、
酸化型CoQ10/総CoA10量(%CoQ10)値は有意に増加していたということです。
このことから、線維筋痛症では、
内在性CoQ10の欠乏および酸化ストレスの増大が示唆されます。
また、対照群に比べて、
線維筋痛症患者では、
血漿中の遊離脂肪酸値が有意に増加、
総遊離脂肪酸中の不飽和脂肪酸値の有意な低下が認められたことから、
繊維筋痛症では、組織中での酸化ストレス障害が示唆されます。
次に、
線維筋痛症患者における還元型CoQ10サプリメントの効果が調べられました。
具体的には、
線維筋痛症患者に対して、
1日あたり100mgの還元型CoQ10が12週間投与されています。
還元型CoQ10投与の結果、
CoQ10値の増加、
%CoQ10値の低下が認められました。
遊離脂肪酸値やその組成に変化は認められませんでしたが、
遊離コレステロールとコレステロールエステル値は、有意に低下し、
遊離コレステロール:コレステロールエステル比も有意に低下しています。
このことから、
還元型CoQ10投与は、コレステロール代謝に対する改善作用が示唆されます。
さらに、
還元型CoQ10投与によって、
慢性疲労スコア(Chalder Fatigue Scale)の有意な改善が認められたということです。
以上のデータから、
線維筋痛症患者では、
酸化ストレス状態の亢進、
還元型CoQ10の低下、
酸化型CoQ10の増加、
脂質異常症が示唆されます。
また、還元型CoQ10サプリメントの投与は、線維筋痛症患者における酸化還元状態を改善し、症状の改善作用を有すると考えられます。
これまでの関連研究としては、
コエンザイムQ10による線維筋痛症の改善作用
コエンザイムQ10による繊維筋痛症改善
等があります。
以上のデータから、繊維性筋痛症に対する対症療法・補完療法の一つとして、コエンザイムQ10投与の臨床的意義が示唆されます。
コエンザイムQ10には、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)と還元型(=ユビキノール,ubiquinol)があります。
還元型CoQ10のほうが、酸化型CoQ10よりも体内で利用されやすいと考えられます。
(酸化型CoQ10は、体内に吸収された後、いったん還元されてから、利用されます。)
コエンザイムQ10に関するこれまでの研究の多くは、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)を用いています。
したがって、一般的には、生活習慣病の予防やアンチエイジング目的に関して、
酸化型CoQ10のユビキノンの摂取で十分な効果が期待できます。
一方、特定の疾患に対して用いる場合、あるいは、体内の生理機能が低下している高齢者の場合には、
還元型CoQ10の利用が推奨されます。
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