臨床精神医学の専門ジャーナルに、オメガ3系必須脂肪酸サプリメントによるADHDへの効果を検証したメタ解析が、米国のグループ(Oregon Health & Science University)から報告されていました。
(
Clin Psychol Rev. 2014 Jun 2;34(6):496-505.)
ADHD (注意欠陥・多動性障害Attention Deficit / Hyperactivity Disorder)とは、多動性や衝動性、注意低下などを特徴とし、発達障害のひとつとされています。
(米国での罹患率は、若年者の6-9%、成人の3-5%ということです。
また、若年者の罹患率は、世界的に類似した数値です。)
ADHDでは、主たる症状として、感情コントロールに乏しいことが知られています。
また、これまでの研究では、
小児や青少年のADHD患者におけるオメガ3系脂肪酸低値やオメガ3系必須脂肪酸サプリメントの働きが示唆されてきました。
ADHDの小児に対するオメガ3系脂肪酸の効果
さて、今回のメタ解析では、
ADHDにおけるオメガ3系必須脂肪酸サプリメント投与時の血中濃度の変化と症状の関連について検証されました。
具体的には、
2つのメタ解析が行われており、
まず、研究1では、
血中オメガ3系脂肪酸の値と、ADHDとの関連が調べられ、
次に、研究2では、ランダム化比較試験の検証が行われています。
解析の結果、
まず、研究1では、
9報(n=586)が対象となり、
ADHDでは、対照群に比べて、
血中オメガ3系脂肪酸が有意に低値であることが見出されました。
(g=0.42, 95% CI=0.26-0.59; p<.001)
次に、
研究2では、
16報(n=1408)が対象となり、
オメガ3系必須脂肪酸サプリメント投与によって、ADHD関連症状の有意な改善が見出されています。
(g=0.26, 95% CI=0.15-0.37; p<.001)
特に、ADHDの多動性について、両親や教師による信頼の高い評価での改善が見出されました。
以上のデータから、
ADHDの小児患者では、
血中オメガ3系必須脂肪酸が低値であり、
オメガ3系脂肪酸の投与による症状の改善作用が示唆されます。
EPAや
DHAなどのオメガ3系必須脂肪酸は、抗炎症作用・動脈硬化予防作用、認知機能改善作用、抗うつ作用など多彩な働きが示されています。
EPAやDHAといったオメガ3系脂肪酸では、抗炎症作用を介した動脈硬化抑制作用による生活習慣病予防効果が知られています。
オメガ3系脂肪酸の抗炎症作用のメカニズムとして、以前は、オメガ6系との比率からアラキドン酸カスケードへの機序が考えられていました。
現在では、これに加えて、EPAとDHAの代謝物自体に抗炎症作用があることがわかっています。
臨床研究におけるオメガ3系脂肪酸の投与量は、1日あたり数百ミリグラムから4グラム程度です。
また、EPA:DHA=2〜3:1の割合です。
日本人の食事摂取基準では、EPAおよびDHAの摂取量を一グラム/日としています。
EPAもDHAも、どちらも健康維持や疾病予防に重要です。
一般に、
DHAは脳の栄養素、
EPAは血管の栄養素といえるでしょう。
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