サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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エキナセアの風評被害(?) [2006年08月23日(水)]
耳鼻科の開業医のJ先生とお話しをする機会がありました。


J先生は、ご自分のクリニックのHPを開設・運営をされているのですが、
最近は、サプリメント・健康食品に関する問い合わせが非常に多いとのこと。

J先生ご自身も関心は高いので、サプリメントについて、いろいろと論文などを
ご覧になっているとおっしゃっていました。


会話の中で、J先生が「エキナセア」について何度か言及されたので、

私が、

「エキナセアは、適切に使えば、確かに効果があるのですが、
昨年のNEJM(ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)に発表された、
ネガティブなデータが誤解を生じてしまって、困ったものですね。」

といった感想を述べたところ、


J先生は、その論文の存在はご存知でしたが、
内容に問題があることについては初耳だったようでした。




NEJM誌に発表されたネガティブデータというのは、
エキナセアによる、「風邪の予防および治療」効果を検証した臨床試験です。

試験の結果は、効果が認められなかったというもので、医療従事者向けのメディアや、
一般の健康関連メディアに、

「エキナセアに効果なし」

と報道されました。

ご記憶の方もおられるのではないでしょうか。


実は、NEJMに掲載されたこの試験では、実験プロトコールに問題(というより誤り)があり、
アメリカの専門家の間では、大きな批判をあびています。



例えば、

1.エキナセアの種類の選択の誤り

2.用法・用量の誤り

です。



アメリカの先住民が用いてきたエキナセア。

エキナセアとしては、大きく3種類が知られています。
   (学名:E. angustifolia, E. pallida, E. purpureaの3種です。
   遺伝子のタイプでさらに細かな分類も可能です。)


伝統的な処方では、これらの全草に由来する抽出物を投与します。

最もよく使われるのは、E. purpureaです。
3種類すべてを混合するほうがいいという考えもあります。
(有効成分や作用機序がまだ完全には解明されていないので。)


ところが、NEJMでは、
E. angustifoliaの根のみ
を投与して、実験を行っています。

さらに、用量・用法が、十分ではありません。
 (90年代のドイツ・コミッションEに準じていますが、その後の研究では、
 もう少し多い用量が推奨されています。)


その他、調整法が標準化されていないといった根本的な問題もあります。


以上のように、誤ったプロトコール・「不適切な」プロトコールで試験を行った結果、

「エキナセアには効果なし」

といっているわけですが、

当然、欧米の研究者の間では、数多くの批判が行われています。


実際、NIH(アメリカ国立衛生研究所)の生薬の専門家による
プレゼン資料が私の手元にあります。


ところが、NEJMといえば、一流のジャーナルとされていますので、エキナセアに対するネガティブデータがひとり歩きしているのが現状です。

論文の全体をきちんと読んで、問題点を理解できる専門家は、ごく少数です。

その結果、このエキナセアのNEJMの論文についても、抄録を読むだけであったり、
他の人に取材しただけの耳学問による知識のみにもとづいて、
いいかげんな内容の記事を発信しているメディアが多いため、誤解を生じています。



冒頭で述べたJ先生は、耳鼻科の先生です。

そのため、専門外であるサプリメントの情報については、医療従事者向けのメディアで得た、「2次情報」に頼ることはやむをえないと思います。

(私も、自分の専門外のことについて、データにおけるバイアスの存在など、詳細な情報はわかりません。)


ただ、「医薬品」であれば、このような「誤った解釈」による論文が出たり、それがネガティブ・データとして一人歩きしたり、ということは「考えにくい」と思います。



しかし、「サプリメント」の場合、専門家や研究者がまだ多くはないため、
メディアによる「風評被害」が、医療従事者の間でも生じているようです。

 (ちなみにこれは、見解の相違というレベルではありません。
 「不適切な」実験プロトコールで行われた臨床試験が、論文になり、
 「ネガティブデータ」として、ひとり歩きしているケースはたくさんあります。)



なお、エキナセアについては、NEJMのネガティブな論文とほぼ同時期に、ある専門ジャーナルに別の論文が発表されています。


Phytother Res というジャーナルに発表されたこの論文は、

・150名の風邪症候群患者を対象に、

・2つの症状確認時点で、

・市販のE. purpureaを7日間投与し、

・投与群と偽薬群の比較

による臨床試験を報告しています。



NEJMよりも、きちんとした実験プロトコールに基づいて行われた臨床試験です。

こちらのほうは、ポジティブなデータ、つまり、

「エキナセアの効果が認められた」

というデータでした。


ところが、こちらのほうは、ニュースとしては、まったく取り上げられていません。


(なお、これらの論文の網羅的な情報は、
拙著『医療従事者のためのEBMサプリメント事典』の
「エキナセア」の項に詳述しています。)


専門家にとって、この2つの論文は、両方とも知っておくべき内容です。
また、研究者であれば、批判的に読むことが可能です。


しかし、日本(および欧米の一部)の医療従事者向けメディアは、
NEJMのデータのみ取り上げて、内容を鵜呑みにし、
「エキナセアに効果なし」
という報道を行っています。

原著論文を正確に理解し、2次情報として提供することは、容易ではないようですね。


アメリカ大統領諮問委員会(代替医療)に、
ハーブの専門家として参加しているDr.Low-dogによると

「エキナセアは、アメリカ人が、生薬の効果を最初に実感するハーブ」

ということです。
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