今月の栄養学の専門誌に、魚油(フィッシュオイル)による手術後の栄養管理に関する臨床研究が、スイスとドイツのグループから報告されていました。
(Eur J Clin Nutr 62:1116-1122;2008)
DHAやEPAなどオメガ3系脂肪酸を豊富に含む魚油は、抗炎症作用を有することから、外科手術後に生じる炎症反応を抑える働きが期待されます。
今回の研究では、腹部大動脈瘤の手術を対象に、魚油を含む静脈栄養法の有効性と安全性が検討されました。
標準的な静脈栄養法(中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸が50:50)あるいは、これらに魚油を含む栄養法(魚油は10%)が、術前の安静時消費エネルギー量の1.3倍にて4日間実施されました。
試験の結果、どちらの栄養療法も、安全性に関連する生化学検査指標に違いはなく、高い許容性が示されています。
魚油を含む栄養療法群では、前値および標準的な栄養療法群に比べて、血中DHAおよびEPAの顕著な増加が認められました。
魚油投与群では、ICU滞在日数(1.6±0.4 vs. 2.3±0.4)および病院滞在日数(9.9±2.4 vs. 11.3±2.7)がそれぞれ短くなる傾向が見られています。
以上のデータから、標準的な静脈栄養に魚油を加えた栄養療法は、許容性が高く、術後の回復効果に優れていることが示唆されます。
この研究は、病院での静脈栄養法についての評価ですので、経口摂取によるサプリメントにそのまま適応できるわけではありませんが、魚油の抗炎症作用による効果を示したデータとして興味深いと思います。
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