サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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チョコレートのフラボノイド [2008年12月04日(木)]
栄養学の専門ジャーナルに、ダークチョコレートの臨床的な効果を検証した総説が、米国のグループから報告されていました。
Nutr Rev. 2008 Nov;66(11):630-41.)



カカオポリフェノールの含有量が多いダークチョコレートは、血管機能改善や高血圧改善といった機能性を有しており、多くの臨床研究も報告されています。


カカオ(学名Theobroma cacao)には、各種のフラボノールが存在し、抗酸化作用などの働きも示されてきました。


今回の総説では、医学的なメリットとなる機能性や栄養学的な視点から、カカオ関連商品の機能性について、チョコレート製品やココアの働きが解析されています。


カカオの効果は、フラボノイド類に依存しますので、チョコレートを用いた臨床研究ではダークチョコレートが用いられます。

また、フラボノイド類を高濃度に含むココアでは、糖類の摂取が多くならないように調整が行われます。


これまでの臨床研究や複数の総説によると、カカオポリフェノールやダークチョコレートの機能性(健康増進効果)は間違いないと考えられます。

(ただし、カカオ含有製品では、糖質などエネルギーの摂りすぎには注意が必要です。)



DHCでは、カカオポリフェノールを豊富に含む「カカオ種子エキス」を製品化しています。

その他、チョコレート関連製品では、「チョコレートフォンデュ」もあります。
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倹約遺伝子説に対する反論 [2008年12月03日(水)]
近年のライフスタイルの変化に伴って,肥満者が急増した原因として,

「倹約遺伝子説」
(「エネルギー倹約遺伝子説」)

が広く受け入れられています。


これは,かつて,食糧不足や飢饉の時代には,過剰なエネルギーを効率よく脂肪に蓄えることのできる人が生存に有利であったため,そのような遺伝子(=エネルギー倹約遺伝子)を有する人が選択的に生き延びてきた,その結果,過剰エネルギーの摂取によって太りやすい体質の人が多い現在では,肥満者が増えている,という仮説です。


この倹約遺伝子説(thrifty gene説)に対しては,反論があり,別の仮説(drifty gene説)を提唱する研究者もいます。

(以前にもこのブログで紹介したことのある,JR Speakmanによる説です。)


肥満研究の専門誌に,thrifty gene vs. drifty geneのディベートが掲載されていました。
(Int J Obes 32: 1607-1610 ;2008,Int J Obes 32: 1611-1617;2008)


倹約遺伝子説に対するdrifty gene説の論点は,飢饉や飢餓では遺伝子の選択と集積は説明がつかないということです。

論文では,飢饉と出生率の関係,体重の季節変動について,バングラデシュやガンビア,オランダのデータを示しながら反駁しています。



エネルギー倹約遺伝子説については,近年の状況証拠から,広く受け入れられているように思われがちですが,実際にはサイエンスの分野として議論があるということになります。

(欧米の学会に参加するとわかりますが,最近,話題になっているテーマです。)


どちらが正しいというよりは,環境(栄養と運動)と遺伝子の相互作用という視点からの説明が必要な分野と思われます。

例えば,エピジェネティクスからの説明も可能と考えられます。
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「統合医療」研究班の会議 [2008年12月02日(火)]
インフルエンザが流行し始めている,というニュースがありました。


風邪やインフルエンザ対策のサプリメントでは,エキナセアが最もよく利用されています。

臨床研究では,エキナセアによる予防効果と治療効果の両方が報告されています。


特に,この時期は,予防的に摂取することも可能です。

人混みにでる機会が多い時期,仕事や受験で体調を維持したい場合など,エキナセアを予防的に利用できます。

風邪・インフルエンザに罹っても,症状が軽く済む,あるいは罹病期間が短縮されるという効果が期待できます。


なお,治療目的の場合には,風邪の引き始めに確実に摂ることが肝心です。

(ただし,風邪が長引く場合,インフルエンザが重症化する場合などでは,医療機関を受診しましょう。)



さて,今日は,厚労省・厚生労働科学研究費補助金による研究班会議があり,聖路加国際病院へいってきました。

この研究班も3年目になり,最終年度の報告書の取りまとめについて,参加している医師・研究者の意見調整をしているところです。


「統合医療の有効性・安全性」という研究課題の中で,私の担当テーマはサプリメント・健康食品です。

研究報告書とは別に,啓蒙・情報提供を目的とした小冊子も作成する予定になっており,エビデンスレベルの異なる分野について,記述の仕方を確認することになりました。
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コーヒーの抗凝固作用 [2008年12月01日(月)]
今月の栄養学の専門誌に,コーヒーの抗凝固作用を示したヒト臨床研究が,イタリアのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2008 Dec;100(6):1276-82.)


これまでの疫学研究によって,コーヒーの摂取による心血管疾患リスクの低下が示されています。

作用機序として,コーヒー成分による,血栓症抑制作用,抗凝固作用が推察されます。


今回の研究では,コーヒー摂取による凝固系への影響を検討する目的で,健常者10名を対象に,180mgのカフェインを含む200mlのコーヒーを摂取,あるいは,180mgのカフェイン含有カプセルを200mlの水で摂取し,摂取前,30分後,60分後の血漿における血小板機能が測定されました。

その結果,コーヒー摂取による血小板凝集作用が認められたということです。
(コラーゲンおよびアラキドン酸誘導性の凝集。)

このとき,カフェイン含有カプセル摂取群では,血小板に対する作用は認められていません。


また,コーヒー摂取後,血小板中におけるフェノール酸やカフェ酸の値が有意に増加しています。(これらは,コーヒーの主成分です。)

一方,カフェインは血小板中には見出されていません。


以上のデータから,コーヒーによる抗凝固作用はカフェイン以外の主要成分による機序が考えられます。
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リンゴポリフェノールの胃粘膜保護作用 [2008年11月30日(日)]
栄養学の専門誌に,リンゴポリフェノールによる胃粘膜保護作用を示した基礎研究がイタリアのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2008 Dec;100(6):1228-36.)


医薬品として広く利用されているアスピリンでは,胃腸障害などの副作用が知られています。

一方,機能性食品素材の中には,胃粘膜保護作用を有し,胃腸障害を抑制する働きを示す成分があります。


今回の研究では,ラット胃粘膜におけるアスピリン誘導性障害に対するリンゴポリフェノールの効果が調べられています。


アスピリン経口投与前にリンゴポリフェノールを投与し,COX2などの炎症関連マーカーが測定された結果,COX2 遺伝子やHB-EGF遺伝子の発現増加,胃粘膜障害が有意に抑制されたということです。

このとき,組織学的所見では,障害面積の50%減少が認められています(p<0.05)。


なお,リンゴポリフェノールは,胃酸分泌に対しては特に有意な影響を与えていません。



以上のデータから,リンゴポリフェノールは,抗炎症作用を持つ細胞内分子を誘導することで,胃酸分泌を変えることなくアスピリン誘導性胃粘膜障害を抑制することが示唆されます。
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乳がんとコエンザイムQ10 [2008年11月29日(土)]
栄養学の専門ジャーナルに,乳がん治療にコエンザイムQ10とビタミンB群を併用した予備的な臨床研究が報告されていました。
(Br J Nutr., 100;06, (Dec) 2008, p 1179-1182)


今回の研究では,乳がん患者48名を対象に,乳がん治療薬のタモキシフェン(10mg×2/日)に加えて,一日あたり100mgのコエンザイムQ10,10mgのリボフラビン(ビタミンB2),50mgのナイアシン(ビタミンB3)を併用投与するランダム化比較試験が行われています。

その結果,サプリメント併用群では,乳がん未治療群やタモキシフェン単独投与群に比べて,poly(ADP-ribose) polymerase値の有意な増加および,RASSF1A DNAのメチル化の消失が認められたということです。

(なお,前者はDNA損傷に対する修復活性の亢進を示唆し,後者は予後因子の一つです。)


以上のデータから,コエンザイムQ10とビタミンB群の併用は,タモキシフェン投与時の補完療法となることが示唆されます。

今後,更なる検証が期待される分野です。
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紅景天による抗ストレス・抗疲労作用 [2008年11月28日(金)]
生薬学の専門誌に,紅景天による抗ストレス作用・抗疲労作用を示したヒト臨床研究が,スウェーデンのグループから報告されていました。
(Planta Med. 2008 Nov 18. PMID: 19016404)



紅景天(ロディオラ・ロゼアRhodiola rosea)とは,アジアから欧州,北米にかけての高地にみられるベンケイソウ科のハーブです。

アダプトゲンとして知られている他,紅景天による抗ストレス作用や抗疲労作用,抗うつ作用,認知機能の改善作用等が注目され,欧米において研究が進められています。



さて,今回の研究では,ストレスに伴う疲労に対する紅景天の効果を検討する目的で,20歳から55歳までの男女60名を対象に,1日あたり576mgの紅景天抽出物,あるいは偽薬が4週間投与されました。


QOL(SF-36 questionnaire)や疲労感(Pines' burnout scale),認知機能などに関する指標が測定された結果,紅景天の摂取による抗疲労作用が認められています。

なお,この試験において,特に問題となる副作用は認められていません。


これまでの予備的な臨床研究でも,紅景天による抗ストレス作用・抗疲労作用が報告されており,今回のデータはそれを裏付けたものです。


DHCでは,「紅景天」を製品化しています。
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キャッツクローの有効成分 [2008年11月27日(木)]
構造分析の専門誌に,キャッツクローの有効成分に関する基礎研究が,ポーランドのグループから発表されていました。
(Solid State Nucl Magn Reson. 2008 PMID: 19019638.)



キャッツクローは,南米ペルー原産のハーブで,有効成分として各種のアルカロイド類を含みます。

これまでの臨床研究では,変形性関節症や関節炎での疼痛軽減作用が示されてきました。



今回の研究では,有効成分であるアルカロイド類について,NMRによる解析が行われた結果,ミトラフィリンmitraphylline, イソミトラフィリンisomitraphylline, テロポディンpteropodine (uncarine C), イソテロポディンisopteropodine (uncarine E), speciophylline (uncarine D), リンコフィリンrhynchophylline,イソリンコフィリンisorhynchophyllineが同定され,構造解析が行われています。


これらのアルカロイド類は,抗炎症作用や免疫調節作用を介して,関節リウマチや変形性関節症の症状緩和に効果を示します。


今後,補完医療としてのキャッツクローの有用性について,臨床的意義の検討が期待されます。
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赤ガウクルアの作用 [2008年11月26日(水)]
生薬学の専門ジャーナルに,タイのハーブ・赤ガウクルアの作用を検討した基礎研究が報告されていました。
(J Ethnopharmacol. 2008 Nov 1. PMID: 19010408)


タイのハーブでは,女性ホルモンようの作用を持つプエラリア・ミリフィカがよく知られており,女性の美容と健康のために広く利用されています。

プエラリア・ミリフィカは学名であり,現地では白ガウクルアと呼ばれます。

タイにてガウクルア(グァウクルア)と呼ばれるハーブとして,白ガウクルア(学名Pueraria mirifica)の他,赤ガウクルア(学名Butea superba)があります。

赤ガウクルアは,アンドロゲン作用および抗エストロゲン作用を有するとされ,一般に,男性の強壮目的で利用されることが多いようです。



さて,今回の研究では,正常および閉経モデル雌ラットを対象に,赤ガウクルア根抽出物,あるいはテストステロンが投与され,子宮などの臓器に対する影響が測定された結果,子宮内膜厚の増加,黄体形成ホルモンの増加といった作用が認められたということです。


論文著者らは,赤ガウクルアの経口投与によるアンドロゲン作用および抗エストロゲン作用が示唆される,と考察しています。


なお,赤ガウクルアは,アダプトゲンの1種であり,シルデナフィルのような作用はないと思います。
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レッドオレンジによる抗酸化作用 [2008年11月25日(火)]
今月の生薬学の専門誌に,レッドオレンジ抽出物による抗酸化作用を示したヒト臨床研究がイタリアのグループから発表されていました。
(Nat Prod Res. 2008 Nov;22(17):1544-1551.)



被験者は交通整理担当の警察官で,大気中の汚染物資によって生じる酸化ストレスにさらされていると考えられます。


標準化されたレッドオレンジ抽出物を1ヶ月間投与したところ,非喫煙者群における過酸化脂質の低下(改善),低チオール値を示した群における正常化といった効果(抗酸化作用)が認められたということです。


ファイトケミカル類による抗酸化作用をヒト臨床研究において示唆したという点で意義のある研究と考えられます。
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ビタミンCの摂取量 [2008年11月24日(月)]
ビタミンCは,抗酸化ビタミンの代表であり,保健効果を期待して多めに摂取されることが多いサプリメント成分の一つです。


日本では特に摂取上限は定められていませんが,多く摂ることで軟便や下痢を生じる場合もあります。


(一応の目安として,1日あたり2グラムを超えると,これらの症状を生じることがあるとされています。ただし,個人差があります。)



では,どのくらいの摂取が適切なのでしょうか?


現在,少量(数百r程度)から開始したビタミンCの摂取量を漸増し,消化器系症状が生じた時の摂取量が,その個人にとっての(通常時における)最大の摂取目安量という考え方があります。


臨床研究で検証されたわけではありませんが,血中・組織中の濃度が飽和した時点で,余分なビタミンCが排泄されることを考えると,一つの目安になると考えられます。
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ラホヤ vs. アルバカーキー [2008年11月23日(日)]
スクリプス研究所でのカンファレンスの期間中,私の両隣にすわっていたMDは,対照的な雰囲気でした。


まず,右隣はラホヤでの開業医です。

ラホヤは,リゾートとして人気がある他,医学生物学系の研究機関も数多くあり,閑静な住宅街でもあります。

温厚で古き良き時代のアメリカを連想させる感じのMDでした。



一方,左隣はアルバカーキー(NM)からきたMDです。

アルバカーキーには,一度,統合医療/代替医療のカンファレンスのために訪れたことがあります。先住民やメキシコ系住民の影響を受けた土地で,カンファレンスのテーマにもスピリチュアル系のCAMが取り上げられていました。

初日,お互いに自己紹介をした際,アルバカーキーから来たといわれて,納得してしまう風貌のMDでした。


(なお,科学的根拠があるわけではなく,単なる私の偏見です。笑)


2人とも専門は家庭医学ということでしたが,外見から話した感じまで,まったく対照的なMDでした。
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紅麹とスタチン [2008年11月22日(土)]
今週は、スクリプス研究所でのカンファレンスに参加していました。

質疑応答の中で、「紅麹とスタチンは同一なのに、なぜ区別して議論しているのか?」という質問がフロアのMDからありました。


紅麹は、コレステロール合成を抑制することで、高コレステロール血症を改善する作用を持ちます。

東アジアでは食紅として長く利用されてきており、豊富な食経験に基づく安全性が確立されています。


紅麹には、モナコリン類が存在し、高コレステロール血症に対する効果を示します。

近年の多くの臨床研究において、有効性が示されてきました。


さて、前述のMDからの質問は、紅麹に含まれているのはスタチン系のロバスタチンであり、有効性と安全性についての議論は同じであるべきでは、というものです。

ロバスタチンは紅麹の成分の一つであるモナコリンKと同一です。


モナコリンKは主要成分ですが、紅麹にはそれ以外のモナコリン類が存在し、シナジーによる作用を示します。

そのため、スタチン系に付随する有害事象(例えば横紋筋融解症など)は、理論的には紅麹にも共通すると考えられます。

しかし、実際のアウトカムでは、有害事象が少ないことが示唆されています。


これは、モナコリン類(およびそれ以外の成分)によるシナジーによって、有効性と安全性のバランスが保たれると推察されます。

今後、詳細な分子メカニズムの解明が期待される分野です。
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遠隔ヒーリングについてのレビュー [2008年11月21日(金)]
補完代替医療の中には、アウトカムにおいて有効性が示唆されても、作用機序が明確ではなく、科学的評価法も確立していない方法が少なくありません。


このような補完代替医療の代表として、遠隔ヒーリング("distant healing")があげられます。

遠隔ヒーリングには、祈り、スピリチュアル・ヒーリングなどが含まれます。



遠隔ヒーリングに関するレビューによると、合計2,774名の患者を含む23報を解析した結果、13報(57%)において治療による有意な改善作用が示されています。

(なお、23報の内訳は、ヒーリングに対する介入としての祈り5報、非接触ヒーリングタッチ11報、その他の遠隔ヒーリング7報です。)


論文著者ら(Ernst)は、研究方法の限界を指摘しつつ、57%の研究において有意な効果が示されたことから、追加的な研究の推進に値すると述べています。



Ernstらは、補完代替医療についてのレビューを数多く行っています。

そして、それらの解析は、どちらかといえばネガティブなものが多く、仮にfavorableなデータが示唆されても「さらに検討が必要である」という結論になっています。

(この傾向は、コクランでも同じです。関係性を重視し、個別化医療である統合医療からするとあまり意味をなさないと感じています。)


この遠隔ヒーリングに対する結論は、珍しく前向きな評価という印象でした。
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愛とサポートと心臓病リスクの関係 [2008年11月20日(木)]
人との関係性と疾患リスクの相関に関するデータの調べ物の続きです。


社会性と心臓病リスクとの関係を示した研究が、心身医学の専門誌に報告されています。
(Psychosom Med. 1987;49:341-54.)


それによると、狭心症を有する男女159名を対象に、社会的な関係性におけるサポートの有無を調査した結果、自分が「サポートされている」「愛されている」と感じているグループにおいて、心血管疾患のリスクが最も低かったということです。


(研究では、冠状動脈疾患についてカテーテル検査による評価が行われています。
また、年齢、性別、喫煙歴、脂質異常症といった心臓疾患の危険因子について、データの補正が行われています。)


他の人から「サポートされている」「愛されている」という項目は、冠状動脈のリスク低減に取り上げられることは少ないと思いますが、心身相関の点からは重要な予防因子になると考えられます。


(もちろん、「サポートされている」「愛されている」という人では、他の人へも同様に接していることが推察されます。)
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両親との関係性と病気のリスク [2008年11月19日(水)]
人との関係性と健康状態の関連を示した研究では、ハーバード大学の学生を35年間フォローした「The Harvard Mastery of Stress Study」がよく知られています。
(J Behav Med. 1997;20:1-13.)


1952年から54年の男子学生126名を対象に、35年間フォローし、有意な疾患(がん、心臓病、アルコール依存症、高血圧、消化性潰瘍など)の発生をアウトカムとして、対象者と両親との関係性での相関を調べた研究です。


その結果、まず、母親との関係性について、健康上の問題を有していた被験者の割合は、関係が緊張した・こじれたという被験者では91%、関係が良好であったという被験者では45%でした。


次に、父親との関係について、緊張していたという被験者では82%、良好であったという被験者では50%が、健康上の問題を生じています。


両親との関係が緊張していた場合には100%の有病率であったのに対して、両親との関係が良好であった被験者では47%の有病率でした。



一般に、健康上のリスクについて、遺伝や環境、栄養と運動、あるいは心身相関といった個人レベルでの研究データが多いですが、人との関係性も個人の疾病リスクに有意な影響を与えることが知られています。
posted at 23:53 | この記事のURL
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心臓病のリスクを高くする結婚 [2008年11月18日(火)]
昨日のブログのデータとは逆に、結婚が心臓病のリスクを上げるというデータを示した研究もあります。
(Arch Intern Med. 2007;167:1951-7.)


イギリスの9,011名(男性6,114名、女性2,897名)を対象に12年間フォローアップを行った結果、ハッピーではない結婚(配偶者との関係がうまくいっていない結婚)は、性別にかかわらず、心血管イベントのリスクを34%上げるということです。


近しい人間関係におけるネガティブな関係性が病気のリスクを高めるというデータです。
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結婚と心臓死の関係 [2008年11月17日(月)]
関係性と疾患の相関について調べていたところ、結婚と心臓疾患の予後との関連を調べた研究がみつかりました。
(JAMA. 1992;267:520-4.)


心臓の冠動脈疾患の予後と社会生活との関係を調べる目的で、米国にて行われた研究です。


心臓カテーテル検査後の1,368名の男女(82%は男性)を対象に転帰を調べた結果、未婚者あるいは(恋愛において)信頼できる人がいない場合は、既婚者に比べて、5年間の死亡リスクが3倍に達したということです。

(なお、研究では、その他のSESも交絡因子として検討されています。)



人との関係性が疾患の予後に有意な影響を与えることを示した、興味深いデータです。
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リンゴによる抗がん作用 [2008年11月16日(日)]
生薬学の専門ジャーナルに、リンゴ(Malus sp.)の抗がん作用に関する総説が発表されていました。
(Planta Med. 2008;74:1608-24.)



リンゴにはポリフェノールやファイトケミカル類が含まれていることから、機能性食品素材として注目されています。


特に、ヒドロキシケイ皮酸, ジヒドロカルコン、ケルセチン、カテキン、プロシアニジンといったファイトケミカルが知られています。

また、リンゴの赤色色素にはアントシアニン類が存在します。


これまでの研究によって、リンゴおよびリンゴ製品は、多彩な健康増進作用を有することが示されてきました。


具体的には、心血管疾患、喘息、肺機能障害、糖尿病、肥満、がん等といった疾患に対する作用です。


今回の総説では、リンゴ抽出物による抗がん作用についての解析が行われており、オリゴメリック・プロシアニジン(oligomeric procyanidin、OPCs)による作用機序が基礎研究において示されていると述べられています。

OPCによる抗腫瘍作用、抗酸化作用、抗炎症作用、情報伝達機構に対する調節作用、アポトーシス誘導作用がメカニズムとして考察されています。


動物実験では、リンゴ製品による皮膚がん、乳腺がん、大腸がんの予防作用が示されてきました。


また、疫学研究では、1日あたり1個以上のリンゴの摂取によって、肺がんと大腸がんのリスクが低下するという相関が認められています。



リンゴの効果を得るためには、果物としての摂取の他、リンゴポリフェノールを含むサプリメントの利用もできます。
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Omics研究についての記事 [2008年11月15日(土)]
先日、『モダンフィジシャン』という内科系総合誌の08年11月号が送られてきました。


この号では、特集「いま、知っておきたい統合医療」として、統合医療の理念から主要な代替医療の各論に至るまで、各分野の担当者が寄稿しています。


私は、「統合医療におけるOmics研究」と題した論文を寄せました。
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医学博士 蒲原聖可
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