今月の栄養学の専門ジャーナルに,地中海食による気道食道がんリスク低下作用を示した疫学研究が,ギリシャのグループ(University of Athens)から報告されていました
(
Br J Nutr. 2010 May 26:1-6.)
地中海食は,地中海地方の伝統食で,野菜や果物,全粒の穀類,種実類,オリーブオイルの利用が多いという特徴があります。
口腔がんや咽頭がん,喉頭がん,食道がんといった気道消化管がんの発生リスクには,いくつかの食事因子も関与すると考えられます。
(論文著者らによると,ギリシャでは,これらの気道食道がんの罹患率が低いということです。)
そこで,今回の研究では,伝統的な地中海食と,気道食道がんのリスクについて検討が行われました。
具体的には,アテネの病院において,気道食道がん患者239例と,対照群194例の2群を対象に,地中海食の摂取状況が0から9までスコア化され,解析が行われました。
(なお,スコア化に際しては,植物性食品やオリーブオイルの摂取が多いこと,肉類,乳製品,飽和脂肪酸の摂取が少ないことを伝統的な地中海食としています。)
解析の結果,伝統的な地中海食に従った食生活を有する群では,気道食道がんのリスクが有意に低下することが見出されています。
ただし,個別の食事因子についての解析では,特定の素材との関連は明らかではありません。
したがって,伝統的な地中海食の摂取は,それぞれの食材のシナジーによって,気道食道がんのリスクを低下させると考えられます。
論文著者らは,ギリシャでは,喫煙や飲酒の習慣が比較的みられるにもかかわらず,これらのがん罹患率が低いのは伝統的な地中海食の影響も示唆されると考察しています。
(赤ワインのフレンチパラドックスに類似した話です。)
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