今月の栄養学の専門誌に、DHAの豊富な魚油の投与によって肥満者における自律神経障害が改善したという臨床研究が報告されていました。
(Br J Nutr. 2008 Nov;100(5):1097-103.)
これまでの研究によって、魚油の摂取と適切な運動習慣とが心血管疾患の予後の改善に寄与することが知られています。
また、運動が心拍数の変動を改善することは知られていますが、魚油による心拍数への影響については議論があります。
(心拍数の変動は自律神経障害の指標となることから、心臓死などの予後を予見する因子の一つと考えられます。)
そこで、今回の研究では、肥満者を対象に、DHAの豊富な魚油サプリメントが心拍数の変動に影響を及ぼすかどうか、検討されました。
心疾患のリスクを有する肥満者65名に対して、ランダム化二重盲検法にて1日あたり6グラムの魚油(DHA 1.56g + EPA 0.36g)あるいは偽薬が12週間投与され、さらに各群について運動を加えた群(1週間に3日間、45分間)と加えなかった群で比較が行われ、46名について心拍数の変動が12週間の介入前後で測定されています。
その結果、偽薬群に比べて、魚油サプリメント投与群において、心拍数変動の改善(自律神経障害の改善)が認められたということです。
ただし、運動介入の併用による効果は明確ではありませんでした。
以上のデータから、心疾患のリスクを有する肥満者では、DHAの豊富な魚油サプリメントの投与が自律神経機能の改善に有用であることが示唆されます。
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