内科学の専門誌に、カロリー制限による骨代謝への影響を検討したヒト臨床試験が、米国のグループから発表されていました。
(Arch Intern Med. 2008 Sep 22;168(17):1859-66.)
これまでの研究では、カロリー制限(CR:摂取カロリーの制限)が長寿(寿命の延長)をもたらすことが動物実験を中心に報告されています。
(もちろん、CRによる長寿の検証はヒトでは困難ですし、臨床研究での代用アウトカムを用いたデータについては議論があります。)
一方、カロリー制限(CR)では骨代謝にネガティブな影響を与えるのではないかという考え方があります。
そこで、今回の研究では、46名を対象に、次の4群に分けて6ヶ月間の試験が行われました。
1.標準食(対照群)
2.CR群(必要エネルギー量から25%制限)
3.CR+運動併用群(必要エネルギー量から25%制限)
4.低カロリー群(1日あたり890キロカロリー摂取。15%の減量を目標)
6ヶ月後の体重の変化は、対照群では-1.0%、CR群では-10.4%、CR+運動群では-10.0%、低カロリー群では-13.9%でした。
骨密度、骨代謝マーカー(骨特異性ALP、オステオカルシン、T型コラーゲン関連指標等)が試験の前後で比較された結果、まず骨密度について、4群とも特に有意な相違は認められていません。
また、骨形成に関連して、ALPはCR群にて減少しましたが、CR+運動群や低カロリー群、対照群の3群では有意な変化は認められませんでした。
骨吸収について、T型コラーゲン関連指標では、介入の3群とも増加しています。
以上のデータから、論文著者らは、中等度のカロリー制限であれば、運動の有無にかかわらず有意な骨喪失を生じることなく、体重減少効果が得られる、と考察しています。
(今回の研究の被験者は、比較的若年でした。)
一般に、カロリー制限が長期にわたる場合は、カルシウムなど栄養素の充足度を考慮したプログラムが必要と考えられます。
(自己流の食事制限によるダイエットや、単一の食材を中心に摂取することによるダイエットでは、必須栄養素の不足を生じるリスクがあります。)
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