ローカーボダイエット(低炭水化物食)が減量により効果的であるという臨床研究が、イスラエルと米国の研究グループから発表されていました。
(NEJM 359:229-241,2008)
長い間、オーソドックスな医学・栄養学の視点からは、炭水化物を制限するダイエット法は適切ではない、とされてきました。
一方、米国を中心に、民間の商業ダイエットでは、アトキンスやゾーンダイエットなど、炭水化物制限による食事療法が提供されています。
そして、この数年、低炭水化物食(ローカーボダイエット)が、低脂肪食(ローファットダイエット)等よりも減量に効果的であるという臨床試験が続々と発表されるようになりました。
今回の研究では、肥満者322名(平均年齢52歳、平均BMI 31)を被験者とし、次の3つのうちのいずれかの食事療法が2年間実施されました。
(1)低脂肪+カロリー制限食
(2)地中海式+カロリー制限食
(3)低炭水化物食(カロリー制限なし)
3種類の食事療法のうち、地中海式ダイエット群では、食物繊維の摂取が最も多く、また、飽和脂肪酸に対する単価不飽和脂肪酸の割合が有意に高値でした。
(飽和脂肪酸は肉類などの動物性食品に多く、単価不飽和脂肪酸はオリーブオイルに多く含まれます。
低炭水化物食群は、炭水化物の摂取量が最も少なく、脂肪とタンパク質、コレステロールの摂取量が最も多くなっています。
また、尿中ケトン体が高値でした。
平均減量幅は、低脂肪ダイエット群2.9kg、地中海式ダイエット群4.4kg、低炭水化物ダイエット群4.7kgという結果でした。
(有意差あり)
2年間の試験を完了した被験者では、減量幅はそれぞれ3.3kg、4.6kg、5.5kgとなっています。
このとき、総コレステロール/HDLコレステロール比は、低炭水化物食群では20%の低下、低脂肪群では12%の低下が認められています。(p=0.01)
この他、糖尿病を有する36名の被験者では、空腹時血糖値およびインスリン値の変化に関して、地中海式ダイエットのほうが、低脂肪ダイエットよりも好ましい結果となっています。
以上のデータから、低炭水化物食および地中海式ダイエットは、低脂肪食の補完療法として意義があると考えられます。
肥満や糖尿病に対しては、低脂肪食が標準的な食事療法ですが、十分な改善が認められない人も少なくありません
その場合、炭水化物制限食(ローカーボダイエット)が選択肢の一つと考えられます。
(近年の多くの臨床研究をみるとき、ローカーボダイエットを推奨するための科学的根拠が得られていると思われます。
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