今月の栄養学の専門ジャーナルに、母乳と成人後のコレステロール値の関係について検討した研究がイギリスのグループから報告されていました。
(Am J Clin Nutr. 2008 Aug;88(2):305-14.)
これまでの研究によって、乳児期の授乳が、コレステロール代謝に影響を及ぼすことが知られています。
今回の研究は、母乳による授乳と、成人期の血中コレステロール値との関係を明らかにする目的で実施されました。
既報17報の合計17,498名(内訳は母乳群が12,890名、フォーミュラ群が4,608名)を対象に解析が行われた結果、フォーミュラ乳摂取群に比べて、母乳摂取群において、血中総コレステロール値が有意に低いことが示されました(–0.04 mmol/L, P = 0.037)。
(なお、データは、BMIや喫煙、SES等で補正されています。)
この差異は、母乳のみを摂取した群(母乳のみで育てられた群)において、より顕著であったということです。
以上のデータから、母乳の摂取(授乳)と、成人期における総コレステロール値の低下との間に有意な相関があると考えられます。
母乳が脂質代謝に影響を与え、成人期の脂質異常症(高脂血症)を抑制することを示す、興味深い研究です。
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