臨床精神医学の専門ジャーナル(電子版)に,イチョウ葉エキスによる遅発性ジスキネジアの改善効果を示した臨床研究が報告されていました。
(
J Clin Psychiatry. 2010 Sep 21)
遅発性ジスキネジア(tardive dyskinesia)は,抗精神病薬の投与時などに見られる不随意運動です。
作用発現機序にフリーラジカルの関与が示唆されており,イチョウ葉エキスによるスカベンジャー作用による改善効果が考えられます。
(
イチョウ葉エキスは,抗酸化作用や血小板凝集抑制作用により,認知症の予防や閉塞性硬化症の改善に用いられるハーブサプリメントです。)
そこで,今回の研究では,統合失調症患者における遅発性ジスキネジアに対して,イチョウ葉エキスサプリメント(EGb-761)の効果が検証されています。
具体的には,DSM-IVにて統合失調症と診断された入院患者で遅発性ジスキネジアを有する患者157名を対象に,
イチョウ葉エキス(240mg/日)投与群(n = 78)あるいは偽薬(n = 79)のいずれかが二重盲検法にて投与されました。
主アウトカムとして,
12週間後の時点でのAIMS(Abnormal Involuntary Movement Scale,異常不随意運動評価尺度),およびAIMSスコア30%以上減少を示した患者の割合,
副アウトカムとして,陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale:PANSS)などが解析されています。
157名のうち,152名が試験を完了しました。
解析の結果,偽薬対照群に比べて,イチョウ葉エキス投与群では,AIMSスコアが有意に減少しました(2.13 ± 1.75 vs -0.10 ± 1.69; P < .0001)。
また,
介入に対して反応した患者の割合も,偽薬群の4名(5.1%)に対して,イチョウ葉エキス投与群では,40名(51.3%)でした。
なお, PANSSや認知機能指標に関しては,投与前と12週間後では有意差は認められていません。
以上のデータから,統合失調症における遅発性ジスキネジアに対して,イチョウ葉エキスサプリメントの効果が示唆されます。
今後,質の高い臨床研究による検証が期待される分野です。
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