今月の臨床栄養学の専門ジャーナル(電子版)に,マルチビタミンサプリメントの利用と,心筋梗塞の罹患率との相関について調べた調査研究が,スウェーデン(Karolinska Institutet)のグループから報告されていました。
(
Am J Clin Nutr. 2010 Sep 22)
一般に,マルチビタミンサプリメントは,推奨量(RDA)を補うためのベーシックなサプリメントです。
潜在的な栄養素の不足を予防し,慢性疾患や生活習慣病のリスクを減らすと考えられますが,効果の大きさが顕著でなく,働きが緩徐であるため,RCTでの有意差を検出することは困難と考えられます。
(緩徐な作用が個人差に埋もれてしまい,検出力不測で偽陰性になることが推測されます。)
さて,今回の研究では,マルチビタミンサプリメントの利用と,心筋梗塞罹患率との関連について,調査が行われました。
具体的には,スウェーデンにおいて49-83歳の女性(心血管疾患(CVD)の既往を有していない31,671 名と, CVDの既往歴のある2262名)を対象に,1997年の時点でのマルチビタミンサプリメントの利用状況が調査され,その後,平均10.2年間のフォローアップが行われました。
マルチビタミンサプリメントの摂取内容は,以下のとおりで,RDAに近いものでした。
vitamin A (0.9 mg), vitamin C (60 mg), vitamin D (5 μg), vitamin E (9 mg), チアミン(1.2 mg), リボフラビン(1.4 mg), vitamin B6 (1.8 mg), vitamin B12 (3 μg), 葉酸(400 μg).
平均10.2年間のフォローアップの期間中,
CVD既往歴のない群では932例,
CVD既往歴のある群では269例の
心筋梗塞が認められました。
CVD既往歴のない群では,
サプリメント非利用群に比べて,マルチビタミン単独利用群では,27%のリスク低下が見出されました(HR 0.73, 95% CI: 0.57, 0.93)。
また,マルチビタミンと他のサプリメントを併用している群では,30%のリスク低下(0.70, 95% CI: 0.57, 0.87)
マルチビタミン以外のサプリメント利用群では,7%のリスク低下(0.93, 95% CI: 0.81, 1.08)
という結果が得られています。
さらに,マルチビタミンを5年以上にわたって利用している群では,
41%のリスク低下が示されました。
一方,CVD既往歴を有する群では,心筋梗塞の発症と,マルチビタミンやその他のサプリメントとの相関が見出されていません。
以上のデータから,マルチビタミンサプリメントの長期にわたる利用は,心血管疾患の既往歴のない女性において,心筋梗塞の発症と負の相関関係にあることが示唆されます。
今後,一次予防効果の有無など,因果関係の検証が期待されます。
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