肥満研究の専門ジャーナルに,代替食(フォーミュラ食)を利用した減量によって,性機能および下部尿路症状の改善を示した臨床研究が,シンガポール(Changi General Hospital)のグループから報告されていました。
(
Int J Obes (Lond). 2010 Sep;34(9):1396-403.)
肥満・2型糖尿病の男性では,勃起障害や下部尿路症状の合併が認められます。
今回の研究では,減量によって,これらの症状が改善するかどうか,検証されました。
具体的には,BMIが30以上の上半身肥満の患者を対象に,低エネルギーの代替食(フォーミュラ食,Kicstart)を8週間投与し,インスリン抵抗性,血中テストステロン値,性機能(IIFE-5にて評価),性欲(Sexual Desire Inventory, SDIにて評価),下部尿路症状(IPSSにて評価)などが測定されました。
(被験者の平均年齢は49.7歳,2型糖尿病患者は19名,非糖尿病の被験者は25名です。また,非糖尿病でBMIや腹部周囲径が同程度の対照群は26名となっています。
代替食利用の結果,10%の体重減少,インスリン感受性の有意な亢進,血中テストステロン値,IIEF-5,SDIスコアの有意な増加,ウエスト周囲径とIPSSの有意な低下(改善)が見出されたということです。
(糖尿病群と非糖尿病群のいずれでも。)
減量の割合は,血中テストステロン値の改善(r = -0.34), 勃起障害の改善(r = -0.26),下部尿路症状の改善(r=0.65)と有意に相関していました。
また,下部尿路症状の減少(改善)は,血中テストステロン値の増加(r = -0.35), 勃起障害の改善(r = -0.42),性欲指標の改善(r = -0.40)と有意な相関が認められています。
以上のデータから,代替食・フォーミュラ食による減量は,中高年の肥満者における下部尿路症状の改善,性機能の改善に有用であることが示唆されます。
したがって,シルデナフィル(バイアグラ)などを使う前に,肥満の改善が有効です。
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