今月の糖尿病学の専門ジャーナルに,シナモンによる糖尿病コントロール改善作用を示した臨床研究が,イギリスのグループ(Imperial College London)から報告されていました。
(
Diabet Med. 2010 Oct;27(10):1159-67)
近年,いくつかの予備的な臨床試験で,シナモンによる糖尿病改善作用/血糖コントロール改善作用が示されています。
今回の研究では,2型糖尿病患者において,シナモン抽出物による糖代謝および脂質代謝への影響が検討されました。
具体的には,2型糖尿病患者58名(男性25名,女性33名,平均年齢54.9歳)を対象に,1日あたり2グラムのシナモンあるいは偽薬が12週間投与されています。
(被験者は,血糖降下剤のみで治療を受けており,HbA1cが7%以上の患者です。)
投与試験の結果,
HbA1cは,
シナモン投与群(8.22% to 7.86%)において,偽薬対照群(8.55% to 8.68%)に比べて有意に低下しています(P<0.005)。
また,収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBPは,
偽薬群(SBP: 134.5 to 134.9 mmHg and DBP: 86.8 to 86.1 mmHg)に比べて,
シナモン投与群(SBP: 132.6 to 129.2 mmHg and DBP: 85.2 to 80.2 mmHg)にて
有意に低下(改善)しました(P<0.001)。
その他,空腹時血糖値およびBMIも,シナモン投与群では12週間の介入試験前後の比較では有意な低下(改善)が認められましたが,偽薬投与群との比較では有意差は示されていません。
なお,総コレステロールや中性脂肪,HDL,LDLといった脂質関連指標には有意な変化は見出されませんでした。
以上のデータから,シナモンによる2型糖尿病患者の血糖コントロール改善作用が示唆されます。
今後,基礎研究や臨床試験を行うことで,シナモンによる血糖降下作用の分子メカニズムが解明され,糖尿病の血糖コントロールを目的とした適切な用法用量が見出されれば,シナモンサプリメントが補完療法の一つとして考慮されると思います。
(なお,シナモンパウダーなどの形で通常の食品や飲料に使われる量は少量であるため,今回のような作用は期待できないと考えられます。)
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