今月の科学誌に、植物性エストロゲンの血中濃度と、メタボリック症候群リスクとの関連を調べた研究が、中国のグループ(University of Chinese Academy of Sciences)から報告されていました。
(PLoS One. 2018 Mar 20;13(3):e0194639.)
内臓脂肪型肥満、メタボリック症候群は、生活習慣病の予備群であり、予防や改善が重要です。
大豆やレッドクローバー、プエラリア・ミリフィカには、女性ホルモン様作用を有するファイトケミカル(植物エストロゲン)の1種、イソフラボン類が豊富に含まれており、女性特有の病気に対する予防や改善作用などの機能性が知られています。
また、抗酸化作用や抗炎症作用を介した機能性から、生活習慣病のリスク低下作用や抗がん作用も注目されています。
今回の研究では、
メタボリック症候群のリスクと、血中植物エストロゲンとの関連が検証されました。
具体的には、
中国での横断研究として、
・メタボリック症候群293名、
・健常対照群264名
の2群を対象に、
血中の7種類の植物エストロゲン濃度が測定され、
(daidzein, genistein, glycitein, equol, enterolactone, enterodiol, coumestrol)
メタボリック症候群リスクとの関連が調べられています。
回帰分析の結果、
総イソフラボン量の血中濃度が高いほど、
また、
エクオールの濃度が高いほど、
メタボリック症候群のリスクが低いという有意な相関が見出されました。
また、
エクオールの血中濃度は、
ウエスト周囲径との有意な負の相関が見出され、
HDLコレステロールと、有意な正の相関が見出されました。
さらに、
ダイゼインが高いと、
ウエスト周囲長が低く、
空腹時血糖値が少ない、という相関も見出されました。
以上のデータから、
血中の植物エストロゲンの濃度が高いと、メタボリック症候群リスクが低いという相関が示唆されます。
大豆など植物性食品の一部には、女性ホルモン様作用を有するファイトケミカルの1種、イソフラボン類が豊富に含まれており、女性特有の病気の他、さまざまな生活習慣病に対する予防や改善作用などの機能性が知られています。
最近の研究として、次の報告が知られています。
大豆イソフラボンによる大腸がんリスク低下:メタ解析
大豆イソフラボンによる認知機能改善効果@メタ解析
イソフラボンによる前立腺がんリスク低下作用@日本人男性
大豆の摂取が多いと乳がんリスクが低下@日本人女性
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エクオールとは、腸内細菌により、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインから産生されます。
エクオールは、イソフラボンよりも高い生物活性を有しており、
更年期障害の改善、閉経後の骨粗鬆症予防、心血管疾患の予防作用が示唆されています。
ただし、
エクオールの体内産生には、腸内細菌叢が関与するため、エクオールを産生できる人とそうではない人がいることがわかっています。
日本人でエクオールが産生できるのは、50-60%程度です。
また、食習慣の変化により、若年者では、エクオール産生者の割合が減少しており、
日本人の若年女性では、20-30%の人しか、エクオールを産生できていないと報告されています。
エクオール産生者は、非産生者に比べて、大豆イソフラボンの機能性/健康増進効果や未病対策効果を得られると考えられます。
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