今月の循環器学の専門ジャーナル(電子版)に,チョコレートの適度な摂取による心不全の予防効果を示した研究が,米国のグループ(Harvard Medical School)から報告されていました。
(
Circ Heart Fail. 2010 Aug 16)
ダークチョコレートに含まれるカカオポリフェノールには抗酸化作用があり,動脈硬化性疾患を抑制することが知られています。
ランダム化比較試験では,高血圧改善作用が示されており,疫学研究では,チョコレート摂取と心血管疾患リスク低下の相関が見出されています。
今回の研究では,チョコレートの摂取と,心不全のリスクとの関係が検証されました。
具体的には,48歳から83歳までの女性31,823名を対象に,健康調査と食事調査を行い,1998年1月から2006年12月末までの9年間にわたり,心不全による入院や死亡が調べられています。
(被験者には,糖尿病,心不全,心筋梗塞の既往はありません。
Swedish Mammography Cohortというスウェーデンでの調査に基づく研究です。)
フォローアップ中,379名が心不全で入院,40名が心不全で死亡と記録されています(合計419名が心不全発症)。
心不全罹患率について,交絡因子で補正後の解析では,チョコレート非摂取群に比べて,
--1ヶ月あたり1-3サービングのチョコレートを摂取する群では,26%の有意なリスク低下(0.74 ;95%CI 0.58-0.95),
--1週間あたり1-2サービングのチョコレート摂取群では,32%の有意なリスク低下(0.68 ;95%CI 0.50-0.93)
が認められています。
一方,1週間に3-6サービングのチョコレート摂取群(1.09 (95%CI .74-1.62)),および,1日あたり1サービング以上摂取する群では,有意差なし(1.23 (95%CI 0.73-2.08))ということです。(p for quadratic trend = 0.0005)
以上のデータから,論文著者らは,適度な量のチョコレートの習慣的摂取は,心不全のリスク(入院や死亡)を低下させる,と考察しています。
なお,今回のデータでは,毎日摂ることによる効果は見出されていません。
これは,食事調査に基づく疫学研究の限界のため,検出力が十分ではなかったことが想定されます。
つまり,ダークチョコレートなど詳しい種類の検証がないために,いわゆるチョコレート製品をたくさん摂った場合,チョコレートポリフェノールの好ましい効果に比べて,糖類など他の好ましくない影響が大きく出てしまうことが考えられます。
(交絡因子の補正には限界があり,緩徐な食事因子の作用発現や効果の個人差の影響があります。)
これまでの研究では,カカオポリフェノールの摂りすぎによる副作用などは知られていませんし,チョコレート/カカオポリフェノールを毎日投与したランダム化比較試験では血圧低下作用が示されています。
したがって,カカオポリフェノール含有量の多いダークチョコレートであれば,一定の健康保持効果が期待できます。
(ホワイトチョコレートにはカカオポリフェノールは含まれていません。)
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