今月の循環器病学の専門ジャーナル(電子版)に,ブロッコリーなどに豊富に含まれるファイトケミカルが動脈硬化を抑制するメカニズムを示した基礎研究が,ノルウェイのグループ(University of Oslo)から報告されていました。
(Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2009 Sep 3. PMID: 19729611)
動脈硬化の原因として,血管内皮における炎症を惹起するメカニズムが知られています。
たとえば,p38 MAPキナーゼといった分子を介してVCAM-1亢進によって促進される作用です。
(つまり,動脈硬化とVCAM-1亢進が相関します。)
また,転写因子であるNrf2が,動脈の内皮細胞において働き,酸化ストレス応答系に関与することが示されています。
(Nrf2は,p38-VCAM-1系を抑制し,動脈硬化を防ぎます。)
さて,今回の研究では,Nrf2欠損マウスを用いて,動脈硬化におけるNrf2の働きが検証されました。
具体的には,スルフォラフェンsulforaphaneを正常マウスあるいはNrf2欠損マウスに投与し,動脈硬化関連指標が測定されています。
(スルフォラフェンは,抗酸化作用を有するファイトケミカルの1種で,ブロッコリーやケール,キャベツなどアブラナ科の野菜に多く含まれます。)
その結果,正常マウスではNrf2が活性化され,p38-VCAM-1系シグナルが抑制されることが示されました。
(動脈硬化の抑制を意味します。)
一方,この作用は,Nrf2欠損マウスでは認められていません。
以上のデータから,抗酸化系で働くNrf2は,p38-VCAM-1系の抑制を介して動脈硬化を抑制する作用を発揮することが示唆されます。
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