今月の脂質研究の専門ジャーナルに、DHA(ドコサヘキサエン酸)による重症うつ病の改善作用を示した臨床研究が、オーストラリアのグループ(University of Wollongong)から報告されていました。
(
Lipids. 2013 Jun 4.)
EPAや
DHAなどのオメガ3系必須脂肪酸は、抗炎症作用・動脈硬化予防作用、認知機能改善作用、抗うつ作用など多彩な働きが示されています。
さて、今回の研究では、オメガ3系脂肪酸による重症うつ病への作用が検証されました。
具体的には、
重症うつ病患者95名を対象に、
・DHA高含有サプリメント (2gのDHA、0.6gのEPA、10mgのビタミンE含有) 投与群
・偽薬投与群
の2群について、16週間の介入が行われています。
両群とも、毎週、
臨床心理士による標準治療としての心理療法を受けています。
うつ病の指標として、
ハミルトンスケールの17項目、
Beck Depression Inventory
が用いられました。
また、投与前後において、48名の被験者では、
赤血球中の脂肪酸値が測定されています。
解析の結果、
サプリメント投与群では、
赤血球中の脂肪酸に占めるDHAの割合が、
4.1 ± 0.2%から7.9 ± 0.4 %へと有意に増加しました。
(p < 0.001)
偽薬対照群では有意な変化は示されていません。
(4.0 ± 0.2 to 4.1 ± 0.2 %)
次に、うつ病スコアについては、両群間での有意差は見出されませんでした。
(サプリメント群:-12.2 ± 2.1、偽薬群;-14.4 ± 2.3)
一方、
共分散解析では、
DHAサプリメント投与群において、
赤血球中のDHAの増加とうつ病スコアの改善との間に有意な相関が認められたということです(p < 0.05)。
以上のデータから、
重症うつ病における補完療法として、DHA高含有魚油(オメガ3系必須脂肪酸)サプリメントの投与が有用であると示唆されます。
EPAや
DHAなどのオメガ3系必須脂肪酸は、抗炎症作用・動脈硬化予防作用、認知機能改善作用、抗うつ作用など多彩な働きが示されています。
EPAやDHAといったオメガ3系脂肪酸では、抗炎症作用を介した動脈硬化抑制作用による生活習慣病予防効果が知られています。
オメガ3系脂肪酸の抗炎症作用のメカニズムとして、以前は、オメガ6系との比率からアラキドン酸カスケードへの機序が考えられていました。
現在では、これに加えて、EPAとDHAの代謝物自体に抗炎症作用があることがわかっています。
臨床研究におけるオメガ3系脂肪酸の投与量は、1日あたり数百ミリグラムから4グラム程度です。
また、EPA:DHA=2〜3:1の割合です。
日本人の食事摂取基準では、EPAおよびDHAの摂取量を一グラム/日としています。
EPAもDHAも、どちらも健康維持や疾病予防に重要です。
一般に、
DHAは脳の栄養素、
EPAは血管の栄養素といえるでしょう。
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