今月の神経病学の専門ジャーナル(電子版)に、アルツハイマー病にみられる神経病変に対する大豆イソフラボンの効果を示した基礎研究が報告されていました。
(
Synapse. 2013 Jun 14.)
大豆では、大豆タンパクによる脂質代謝改善作用、大豆イソフラボンによる女性ホルモン様作用や抗酸化作用を介した機能性などが知られています。
さて、今回の研究では、
βアミロイドペプチド1-42 (Aβ1-42)によって誘導された記憶障害や学習障害に対する大豆イソフラボンの作用が調べられました。
(このうちAβ42は、Aβ分子種の中でアルツハイマー病の発症との関連が強いとされています。
Aβ42の特徴として、疎水性が高く凝集しやすい性質があり、細胞傷害性有し、老人斑形成の際にAβ42蓄積がトリガーとなり、他のAβ凝集を引き起こすとされています。)
具体的には、Wistar雄ラットを用いて、
・対照群、
・Aβ1-42群、
・大豆イソフラボン投与群、
・大豆イソフラボン+ Aβ1-42群(80 mg/kg/日のイソフラボン投与群)
の4群に分けて、比較が行われています。
(Aβ1-42は、ラットの側脳室に投与。)
学習および記憶能力、海馬シナプスの構造などが比較されました。
Morris水迷路試験の結果、
Aβ1-42群に比べて、
大豆イソフラボン投与群では、学習・記憶能の有意な改善(移動距離の減少)が認められました。
また、大豆イソフラボン前投与群では、
シナプスの障害が抑制され、Aβ1-42によって生じるタンパク質の変化(PSD-95、CaM、CaMK II、CREB、pCAMK II,・pCREBリン酸化)に対してダウンレギュレーション作用が示されています。
以上のデータから、
大豆イソフラボンの投与は、アミロイドβタンパクによって誘導される学習障害や記憶障害を抑制すること、
その分子メカニズムとして、海馬シナプスの障害を抑制すること、
が示唆されます。
今後、臨床的意義の検証が期待される分野です。
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