英国医師会ジャーナルに、加糖飲料・果汁飲料の摂取と、2型糖尿病リスクとの関連を検証したレビュー・メタ解析が報告されていました。
(
BMJ. 2015 Jul 21;351:h3576.)
砂糖/ショ糖などの甘味料を含む加糖飲料の摂取は、
糖質/炭水化物の摂取であるため、肥満や2型糖尿病リスクを高めると考えられます。
また、果汁には、果物由来のファイトケミカル/ポリフェノールが含まれており、抗酸化作用や抗炎症作用を介した機能性が期待されますが、
甘い果汁には果糖が多く存在するために、肥満や糖尿病のリスクにもなります。
さて、今回の研究では、
加糖飲料、人工甘味料飲料、果汁飲料の摂取と、
2型糖尿病とのリスクの関連について、
体脂肪量による補正の前後で検証が行われています。
具体的には、
米国と英国での研究について、
2014年2月までの主要医学データベースが検索され、
糖尿病を有していない成人を対象にした前向き研究から、
米国の4729報(非糖尿病の成人1億8千9百10万人)
と、
英国の 1932報(同4千4百7十万人).
が抽出されました。
17報のコホート研究(38 253 症例/10 126 754 患者・年)が解析の対象となりました。
解析の結果、
加糖飲料の摂取量が多いと、2型糖尿病のリスクが高くなるという有意な相関が見出されました。
1日あたり1サービングサイズの摂取により、
体脂肪量で補正前では、
18%のリスク上昇
補正後では13%のリスク上昇
が認められています。
また、
人工甘味料飲料では、それぞれ25%と8%、
果汁飲料では、それぞれ5%と7%でした。
なお、人工甘味料でリスク上昇となっていますが、
出版バイアスおよび交絡因子の残存が示唆されました。
米国における過去10年間での、
2億人以上の2型糖尿病患者発症のうち、
180万人は、加糖飲料の摂取によると推計されました。
また、
英国では、260万人の発症者のうち、7万9千人が加糖飲料の摂取によると考えられています。
以上のデータから、
加糖飲料の摂取による2型糖尿病リスクの上昇が示唆されます。
DHCでは、
「‘ゆるやか’糖質制限」(緩やかな糖質制限食・低炭水化物食)を推奨しています。
最新の科学的根拠を俯瞰すると、
「緩やかな糖質制限食・低炭水化物食」を基本とした食生活が、
「ヘルシーエイジング(健康長寿)」
「ダイエット(適正体重の維持)」
「アンチエイジング(抗加齢)」
に有用であると考えられます。
一般的な食事ガイドラインでは、炭水化物の摂取量が、エネルギー比で50%-60%くらいに設定されています。
日本の基準は、欧米のガイドラインに比べて、炭水化物の摂取量が多めに提示されています。
例えば、農水省が作成した食事バランスガイドや日本糖尿病学会のガイドラインなどです。
実際、近年の研究では、糖質制限を支持する多くのデータが示されています。
例えば、
糖質制限食・低グリセミック指数(GI)食・地中海食の糖尿病改善効果
低炭水化物食による血糖改善作用@2型糖尿病患者
糖質の摂取が多いと肥満になる:メタ解析
などです。
また、2型糖尿病の治療では、
血糖コントロールの指標であるヘモグロビンA1cが同じでも、血糖の変動幅が大きいと、血管障害などを生じやすいことが知られています。
(つまり、食後過血糖をおさえる必要があります。)
(そこで、最近では、炭水化物をはじめとする三大栄養素の摂取割合について、個人差を考慮して、多様性を認める指針になりつつあります。)
DHCが推奨する「緩やかな糖質制限」では、
医学的には、例えば、尿中ケトン体が出るほどの糖質制限(超低炭水化物食)ではない食事です。
「緩やかな糖質制限」での
具体的な炭水化物の摂取量は、
1日あたり120グラムから150グラムが適切でしょう。
1日3食とすると、1食あたりの炭水化物摂取量は、
40グラムから50グラムまでです。
これは、
普通サイズの茶碗に1膳の精白米ごはんよりも
やや少ないくらいの量に相当します。
あるいは、コンビニおにぎり1個くらいでしょうか。
(なお、適切な炭水化物の摂取量の設定では、個人差や体調、基礎疾患や既往歴の考慮が必要です。
特に、糖尿病や脂質異常症で治療中の場合、自己判断による炭水化物制限や、自己流の低炭水化物食は勧められません。)
従来、肥満や2型糖尿病に対する食事療法では、低脂肪食・低カロリーが推奨されてきました。
低脂肪食・低カロリー食で、減量ができ、血糖コントロールが良好となる場合には、それで問題ありません。
一方、アトキンスやサウスビーチなどに代表されるダイエット法では、低炭水化物食が推奨されてきました。
(80年代から90年代に流行した低炭水化物食は、エネルギー比で40%ほどに抑えるという食事方法です。これに対して、一般的な食事ガイドラインでは、炭水化物のエネルギー比は55%〜60%が適切とされています。)
糖尿病治療では、糖質制限食が選択肢の一つとして認められつつあります。
(一般に、炭水化物=糖質+食物繊維です。
ただし、食物繊維は、低炭水化物食/糖質制限食では、炭水化物/糖質としてカウントはしていません。
肥満治療では、低炭水化物/ローカーボという表現が使われています。一方、糖尿病治療では、糖質制限という表現が多いようです。どちらも同じ概念です。)
医学医療の世界では、炭水化物を制限する食事療法は、ながらく否定されてきました。
特に、2000年代に入って、ニューアトキンスとして、超低炭水化物食が提唱されると、メインストリームの医学医療界からは、不適切なダイエット法の典型のように攻撃されています。
(超低炭水化物食では、炭水化物の摂取をエネルギー比で5%ほど、あるいは1日20グラム未満に抑えます。)
しかし、この10年ほどの間に、低炭水化物食および超低炭水化物食(炭水化物制限食)が、従来の低脂肪食よりも優れた減量効果を示す、という臨床研究(ランダム化比較試験)が、数多く報告されています。
(私事ですが、10年ほど前に、
「燃焼系ケトン体ダイエット」
というムック本を出したことがあります。
エビデンスが出ているにもかかわらず、炭水化物制限食・低炭水化物食・超低炭水化物食に対する医学界からの批判は大きいのですが、低脂肪食で十分な効果が得られない肥満者や糖尿病予備軍の人がたくさんいるという事実があります。
したがって、
基礎疾患のない肥満者や糖尿病予備軍の人に対しては、
数ヶ月から1年ほど、炭水化物制限食を試みる価値は十分にあると考えます。
(エビデンスがあるのに批判されるという状況は、サプリメント・健康食品も同じです。
一定のエビデンスが構築されているのに、積極的に評価していこうとする医療者は、残念ながら少数派でしょう。
現在の医学医療のビジネスモデルが、基本的には、病人が増えることで儲かる仕組みになっているので、仕方ありませんが。)
最近の研究では、低炭水化物食・炭水化物制限食が有効な人、低脂肪職が有効な人の違いを示唆するデータもあります。
要するに、一律に、低脂肪食、あるいは低炭水化物食というのではなく、その人の体質にあった、テイラーメイドの食事療法を行うことがポイントです。
炭水化物を極端に減らす食事では、結果的に、脂質とタンパク質が多くなるため、体にいい脂肪と植物性タンパク質を多くするなどの工夫も必要でしょう。
同じ炭水化物でも、消化吸収されやすい単純炭水化物は特に禁物です。
DHCの製品で、低炭水化物食・低GI食・低GL食に相当するのは、
DHCプロティンダイエット
です。
DHCプロティンダイエットは、減量のため、あるいはリバウンド予防のための食品(フォーミュラ食・置き換え食)として考えられていますが、
コエンザイムQ10やポリフェノール、食物繊維などの機能性食品成分を含んでおり、
ヘルシーエイジングのための低カロリー・低炭水化物食品として、食事代わりに利用できます。
その他、低GI食、低GL食として、
発芽玄米、
米こんにゃく、
があります。
炭水化物制限というと、「焼き肉食べ放題」のような間違ったイメージで語られることがありますが、決してそのような推奨ではありません。
単純炭水化物を避け、
良質の脂質(エクストラバージンオリーブオイルやオメガ3系脂肪酸)を摂り、
良質のタンパク質を摂る、
(赤身肉や加工肉は避ける。植物性タンパク質や魚介類などを摂る)
という考え方が基本です。
炭水化物制限については、脂質やタンパク質の摂取量が多くなるため、
動脈硬化性疾患リスクや腎臓への負担が議論されることがあります。
しかし、最近の研究では、それらのリスクは否定されつつあります。
DHCでは、
非対面式の介入方法として、
肥満に対するDHCのアプローチ
を確立しています。
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