サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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ピスタチオによる脂質異常症の改善効果 [2008年09月10日(水)]
今月の栄養学の専門誌に、ピスタチオナッツによる脂質代謝改善作用を示したヒト臨床研究が、米国のグループから発表されていました。
(Am J Clin Nutr 2008 88: 651-659.)


一般に、ナッツ類の摂取と、心血管疾患リスクの低下との相関関係が疫学調査で知られています。


今回の研究では、特にピスタチオナッツによる脂質代謝への影響について、低脂肪食に2種類の用量のピスタチオナッツを加える方法で、検討が行われました。

LDLコレステロールが2.86 mmol/L以上の28名を対象に、エネルギー量の等しい3種類の試験食を4週間摂取させています。


試験食は、

(1)低脂肪の対照食(ピスタチオナッツは含まない食事、25%脂肪、8%飽和脂肪酸、9%単価不飽和脂肪酸、5%多価不飽和脂肪酸)、

(2)1日あたり1サービング(皿)のピスタチオナッツ食(エネルギーの10%がピスタチオ由来、30%脂肪、8%飽和脂肪酸、12%単価不飽和脂肪酸、6%多価不飽和脂肪酸)、

(3)1日あたり2サービングのピスタチオナッツ食(エネルギーの20%がピスタチオ由来、34%脂肪、8%飽和脂肪酸、15%単価不飽和脂肪酸、8%多価不飽和脂肪酸)

の3種類です。


試験の結果、(3)のピスタチオナッツ食では、対照食に比べて、総コレステロール値、LDL、非HDL、apo B、apoB/apoA-1の有意な低下が認められました。


また、(2)と(3)のピスタチオナッツ食との比較により、ピスタチオの用量依存的に、総コレステロール/HDL比の低下作用、LDL/HDL低下作用、非HDL/HDLの低下作用が認められたということです。


以上のデータから、ピスタチオナッツは、用量依存的に脂質代謝改善作用を有することが示唆され、心血管疾患リスクの低下作用が期待されます。


ただし、エネルギー比で10%〜20%に相当するピスタチオナッツを毎日摂取することは、あまり現実的とは考えられませんが…。
posted at 23:56 | この記事のURL
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魚油による脂質代謝改善がより効果的なサブグループ [2008年09月09日(火)]
今月の栄養学の専門誌に、フィッシュオイル(魚油)投与による脂質代謝改善作用を示したヒト臨床研究が、イギリスのグループから報告されていました。
(Am J Clin Nutr 2008 88: 618-629.)


EPAやDHAなどのオメガ3系脂肪酸の豊富な魚油は、心血管疾患を予防することが知られています。


今回の研究では、EPAとDHAの中等度の摂取(1日あたりEPAとDHAの合計で2グラム未満)が脂質代謝や酸化ストレスに及ぼす影響に関して、年齢や性別、アポリポプロテインE(ApoE)遺伝子のタイプの違いによる作用が検討されています。


20歳から70歳の312名を対象に、偽薬対照二重盲検クロスオーバー法にて、対照薬、0.7グラムの魚油(EPA+DHA)あるいは1.8グラムの魚油がそれぞれ8週間投与されました。
(washoutは12週間。)

魚油投与の結果、血中の中性脂肪値は、0.7グラム投与群にて8%、1.8グラム投与群にて11%、前値に比べて有意な低下が認められています(P < 0.001)。

このとき、性別と治療効果の関係(P = 0.038)、および性別と遺伝子型と治療効果との関係(P = 0.032)において、それぞれ有意な相互作用が示されました。

具体的には、APOE4の男性において、中性脂肪低下効果が最大であったということです。
(0.7グラム投与群にて15%、1.8グラム投与群にて23%)


さらに、VLDLコレステロール(P = 0.026)の低下やHDLコレステロールの増加といった作用が魚油投与の結果として認められています。


以上のデータから、魚油(EPA+DHA)は、1日あたり0.7グラムの投与によって脂質代謝改善作用を得ることができ、その効果は、特定の遺伝子型を有する男性において大きいことが期待されます。



今後、このような研究のデータが集積されると、性別や遺伝子の違いに基づくオーダーメイドのサプリメント・栄養療法を効率的に実施できるようになると考えられます。


posted at 23:56 | この記事のURL
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2型糖尿病の新しい治療法 [2008年09月08日(月)]
欧州糖尿病学会の学術大会で、ブドウ種子抽出物による2型糖尿病の改善作用を示したヒト臨床研究の発表がありました。

本日の基調講演に続いて行われた口演の1つで、「2型糖尿病の新しい治療法」という最初のセッションの演題です。

6題のうち5題が、抗肥満薬リモナバンや経口インスリン製剤などの薬物治療に関する発表で、最後の1題がブドウ種子抽出物を用いた臨床研究データでした。

(なお、座長は、「栄養療法の一つとして」、という紹介を行っていましたが、栄養療法というよりは生薬・サプリメント療法というのが適切だったと思います。)


研究は、2型糖尿病患者32名を対象に、600mgのブドウ種子抽出物あるいは偽薬を4週間投与した結果、抗炎症作用および脂質代謝改善作用が認められたというものです。
(ランダム化偽薬対照二重盲検クロスオーバー試験。)


欧州糖尿病学会の「2型糖尿病の新しい治療法」という口演セッションにて、サプリメント成分による臨床研究が取り上げられるようになったことで、副作用の少ない治療法としての認知が高まると考えられます。

今後、サプリメントの適正使用にむけて、エビデンスの構築が期待されます。
posted at 23:57 | この記事のURL
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花粉の抗アレルギー作用 [2008年09月07日(日)]
今月の生薬学の専門誌に、花粉抽出物による抗アレルギー作用を示した基礎研究が、ブラジルのグループから発表されていました。
(J Ethnopharmacol. 2008 Sep 2;119(1):41-6.)


民間療法にて、花粉がアレルギー疾患に用いられることがあります。

花粉には、植物に由来するフラボノイド類が含まれており、これらが抗アレルギー作用を示すことが考えられています。


今回の研究では、アレルギーモデルマウスを対象に、花粉抽出物およびミリセチン(フラボノイドの1種)による抗アレルギー作用が検討されました。

花粉抽出物200mg/kgの投与によって、浮腫の抑制、IgEおよびIgGの産生抑制などが認められたということです。

このとき、アナフィラキシー反応からの防御作用も示唆されています。


ミリセチン5mg/kgの投与によっても、IgEおよびIgGの産生抑制などの作用が認められました。


以上のデータから、花粉抽出物およびフラボノイドのミリセチンによる抗アレルギー作用が示唆されます。

今後、臨床研究による検証が期待される分野です。


(なお、花粉の種類はその地域の植生に依存します。場合によっては、花粉の摂取によってアレルギー疾患が悪化するケースもありますので、十分な経過観察が必要です。)
posted at 23:54 | この記事のURL
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サージの抗炎症作用 [2008年09月06日(土)]
今月の栄養学の専門誌に、サージによる抗炎症作用を示したヒト臨床研究が、フィンランドのグループから発表されていました。
(Eur J Clin Nutr 62: 1123-1130;2008)


今回の研究では、サージ(sea buckthorn)果実による風邪および消化器系感染症、尿路感染症、血清CRPへの影響が検討されています。

健康な被験者254名を対象に、サージあるいは偽薬が投与され、233名が試験を完了しました。

解析の結果、各種の感染症に対する影響に関して有意差は得られていませんが、CRPは偽薬に比べて有意に低下したということです (-0.059 mg/l, P=0.039) 。



以上のデータから、サージによる抗炎症作用が示唆されます。

ただし、感染症に対する予防や罹病期間短縮といった作用は明らかではありませんでした。

(一般に、サプリメントでは、風邪の予防および改善にはエキナセア、尿路感染症にはクランベリーエキスが用いられます。)



DHCでは、サージ種子エキスを製品化しています。
posted at 23:52 | この記事のURL
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魚油による手術後の栄養管理 [2008年09月05日(金)]
今月の栄養学の専門誌に、魚油(フィッシュオイル)による手術後の栄養管理に関する臨床研究が、スイスとドイツのグループから報告されていました。
(Eur J Clin Nutr 62:1116-1122;2008)


DHAやEPAなどオメガ3系脂肪酸を豊富に含む魚油は、抗炎症作用を有することから、外科手術後に生じる炎症反応を抑える働きが期待されます。


今回の研究では、腹部大動脈瘤の手術を対象に、魚油を含む静脈栄養法の有効性と安全性が検討されました。


標準的な静脈栄養法(中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸が50:50)あるいは、これらに魚油を含む栄養法(魚油は10%)が、術前の安静時消費エネルギー量の1.3倍にて4日間実施されました。

試験の結果、どちらの栄養療法も、安全性に関連する生化学検査指標に違いはなく、高い許容性が示されています。

魚油を含む栄養療法群では、前値および標準的な栄養療法群に比べて、血中DHAおよびEPAの顕著な増加が認められました。


魚油投与群では、ICU滞在日数(1.6±0.4 vs. 2.3±0.4)および病院滞在日数(9.9±2.4 vs. 11.3±2.7)がそれぞれ短くなる傾向が見られています。


以上のデータから、標準的な静脈栄養に魚油を加えた栄養療法は、許容性が高く、術後の回復効果に優れていることが示唆されます。



この研究は、病院での静脈栄養法についての評価ですので、経口摂取によるサプリメントにそのまま適応できるわけではありませんが、魚油の抗炎症作用による効果を示したデータとして興味深いと思います。

posted at 23:54 | この記事のURL
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ビールと糖尿病の関係 [2008年09月04日(木)]
今月の栄養学の専門誌に、アルコールの摂取による糖代謝への影響を検討したヒト臨床研究が、オランダのグループから報告されていました。
(Eur J Clin Nutr. 2008; 62, 1098&#8211;1105)


これまでの研究によって、適度なアルコールの摂取は、2型糖尿病のリスク低減と相関することが知られています。


今回の研究では、アルコールの適量摂取と2型糖尿病リスクの関連について検証する目的で、脂肪細胞から分泌されるアディポカイン類やインスリン感受性への影響が調べられました。

健康な男性被験者20名(普通体重11名、肥満/過体重9名)を対象に、40グラム/日のアルコール含有飲料、あるいはノンアルコール飲料を3週間摂取させ、アディポカイン類などの指標が測定されています。

(用いられたアルコール飲料は、1日あたりビール3缶です。)


その結果、アルコールの摂取によって、アディポネクチンおよびグレリン値の有意な増加、ASP(acylation-stimulating protein)値の有意な低下が認められました。

このとき、レプチンやレジスチン値は不変でした。

また、OGTTによる2時間値は、アルコールフリー群に比べて、アルコール摂取群において有意に低い値であったということです。

OGTT90分における遊離脂肪酸およびグルカゴン値は、アルコールフリー群に比べて、アルコール摂取群において有意に高値を示しています。


インスリン感受性指標の変化に対して、アディポネクチンの変化は有意な正相関を、レプチンとASPの変化は有意な負の相関を示しました。

なお、これらのデータについて、肥満者と非肥満者との間での差は認められていません。


以上のデータから、適度のアルコール摂取は、アディポネクチンやグレリンを増加させ、ASPを減少させるといった作用を介して、インスリン感受性に影響を及ぼすことが示唆されます。


ただし、糖尿病や肥満に対して、アルコール摂取が推奨されるわけではありません。
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エキナセアの新たな作用 [2008年09月03日(水)]
エキナセアによるPPARγ活性化作用を示した基礎研究が、デンマークのグループから報告されていました。
(Pl Med 74:2008;976, PA148)。


2型糖尿病の病態として、インスリン抵抗性が知られています。

糖尿病治療薬には、インスリン抵抗性の改善に関与するPPARγをターゲットとするもの(チアゾリジン系薬剤)があります。

PPARγ作用薬として働く成分を見出すことができれば、新たな糖尿病治療薬の開発につながると考えられます。


そこで、今回の研究では、PPARγ作用薬としての活性について、各種の植物抽出物がスクリーニングされました。

マウス由来培養細胞系において、ロシグリタゾンをポジティブコントロールとして測定が行われた結果、エキナセア由来のアルカミド類によるPPARγ活性化作用が認められたということです。


エキナセアは、免疫調節作用を有しており、風邪の予防や症状軽減に用いられるハーブです。

今回のデータによって、エキナセアの新たな働きが示唆されたことになります。
今後、研究の進展が期待されます。
posted at 23:53 | この記事のURL
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植物エストロゲン類とブラックコホシュによる乳腺への働き [2008年09月02日(火)]
各種の植物エストロゲン類およびブラックコホシュによる乳腺組織への作用を調べた基礎研究が、ドイツのグループから報告されていました。
(Pl Med 74:2008;953, PA59)。


大豆やレッドクローバーといった植物には、女性ホルモンのエストロゲン様作用を有する成分・イソフラボン類が存在します。

具体的には、ダイゼインやゲニステイン、代謝物のイコールが知られています。

植物エストロゲン類を含む成分は、女性特有の症状に対するサプリメントとして用いられています。


女性向けのサプリメント成分では、ブラックコホシュも利用されます。

ただし、ブラックコホシュには、イソフラボン類は含まれていません。


さて、今回の研究では、更年期障害モデル動物(ラット)を用いて、イソフラボン類およびブラックコホシュ抽出物による乳腺組織への作用が検討されました。

ゲニステイン(15.5mg/日)、ダイゼイン(15.8mg/日)、イコール(15.8mg/日)、ブラックコホシュ抽出物(30.0mg/日)がそれぞれ3ヶ月間投与され、乳腺組織における形態学的な変化が調べられています。

(対照群には、大豆フリー食あるいはエストラジオール投与が行われています。)


その結果、乳腺組織の変化は、ゲニステイン、ダイゼイン、イコールの順に強く認められており、ブラックコホシュでは示されませんでした。



以上のデータから、女性ホルモン様作用を有するイソフラボン類は乳腺組織にも作用することが示されたことになります。


なお、ブラックコホシュは、女性の更年期障害に対して広く利用されていますが、作用メカニズムはイソフラボン類とは異なると考えられます。
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オリーブオイルの動脈硬化予防作用 [2008年09月01日(月)]
今月の栄養学のジャーナルに、単価不飽和脂肪酸の豊富な食事による動脈硬化抑制作用を示唆した臨床研究が、スペインのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2008 Sep;100(3):569-75.)


動脈硬化の一因として、マクロファージが、血中の酸化LDLコレステロールを取り込むメカニズムが知られています。


今回の研究では、マクロファージによる酸化LDLの取り込みや、LDLの酸化感受性に対して、食事由来の脂質がどのように影響を及ぼすか、検討されました。


健康な男性20名を対象に、3種類の食事を各4週間投与するランダム化クロスオーバー法にて実施されています。

1.高飽和脂肪酸食:脂質エネルギー比38%、飽和脂肪酸20%、

2.高炭水化物食:脂質エネルギー比30%、飽和脂肪酸10%未満、炭水化物55%、

3.高オリーブオイル食:脂質エネルギー比38%、単価不飽和脂肪酸22%


以上の3種類による臨床試験の結果、LDLの酸化感受性や酸化LDLの取り込みといった動脈硬化に関連する指標において、高オリーブオイル食がもっとも好ましいデータが示されています。

(酸化に対する抵抗性、酸化LDL取り込みといったデータ。)



今回のデータから、単価不飽和脂肪酸の豊富な食事は、動脈硬化予防という効果が期待できると考えられます。



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