臨床薬理学の専門ジャーナルに、頸動脈内膜剥離術待機患者において、オメガ3系脂肪酸による抗炎症作用を示した臨床研究が、イギリスのグループから報告されていました。
(
Mar Drugs. 2013 Sep 20;11(9):3569-81.)
動脈硬化の進展によって生じた頸部頸動脈狭窄に対して、頸動脈内膜剥離術 (CEA:carotid endarterectomy)が行われることがあります。
動脈硬化の原因として、慢性炎症があり、抗炎症作用を有する機能性食品成分(サプリメント)による動脈硬化性疾患の予防や改善が知られています。
EPAや
DHAなどのオメガ3系必須脂肪酸は、抗炎症作用・動脈硬化予防作用、認知機能改善作用、抗うつ作用など多彩な働きが示されています。
最近では、
オメガ3系脂肪酸による心臓病の二次予防効果@メタ解析
という研究が報告されました。
さて、今回の研究では、動脈硬化に対するオメガ3系脂肪酸による抗炎症作用が検証されました。
具体的には、頸動脈内膜剥離術 (CEA:carotid endarterectomy)施術予定の待機患者121名を対象に、
・オメガ3系脂肪酸投与群(2g/日)
あるいは
・対照群(オリーブオイル2g/日)
の2群について、
手術前までの期間、投与が行われました。
(投与日数の中央値は21日間)
アウトカムとして、血圧や脂質、炎症関連指標が測定されました。
解析の結果、
両群において、
収縮期血圧、拡張期血圧、TG、総コレステロール、LDL、可溶性VCAM-1(vascular cell adhesion molecule-1)の血中濃度、可溶性E-selectin(E-セレクチン)の血中濃度、マトリックスメタロプロテイナーゼ2値の低下が見出されました。
(VCAM-1(vascular cell adhesion molecule-1)は、β1-インテグリンの一つで、血管内皮細胞上に発現する接着部分子です。)
(E-セレクチンは、血管内皮細胞に存在するセレクチンファミリーのタンパク質で、細胞接着分子の1種です。
炎症性サイトカイン類によって誘導され、炎症性疾患やがん患者で血中濃度が増加します。)
これらの指標のうち、
TG値は、対照群(9%)に比べて、オメガ3系脂肪酸投与群(25%)において顕著な低下(改善)を示しました。
また、E-セレクチン値は、オメガ3系脂肪酸投与群で低下、対照群で増加しました。
その他のデータについて両群間で有意差は見出されていません。
以上のデータから、
動脈硬化性疾患患者(頸動脈内膜剥離術待機患者)において、オメガ3系脂肪酸投与による抗炎症作用が示唆されます。
今回の研究では、オメガ3系脂肪酸による顕著な効果が見出されなかった理由として、
・対象者がすでに動脈硬化が進展した患者であり、
・オメガ3系脂肪酸投与の期間が短いこと(対照群が機能性のある成分投与群でありプラセボではないこと)
が考えられます。
(なお、今回のように、ランダム化比較試験で、対照群/プラセボ群にオリーブオイルを用いている試験があります。
しかし、オリーブオイルは単価不飽和脂肪酸として機能性があり、また、エクストラバージンオリーブオイルはオリーブポリフェノールによる抗炎症作用や抗酸化作用がありますので、厳密にはプラセボにはなりません。
2gという用量がオリーブオイルとしては少ないので、臨床的な影響は大きくないかもしれませんが、今回の試験では、両群とも一定の作用が認められています。
先行研究では、動脈硬化抑制作用として、1日あたり25グラムほどのエクストラバージンオリーブオイルを継続して摂取することによる効果が示されています。)
オメガ3系脂肪酸投与による生活習慣病の一次予防効果(病気予防効果)は確立されています。
また、前述のように、二次予防効果(再発予防効果)もメタ解析にて示されています。
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