サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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サプリメント/健康食品についての情報提供のあり方 [2009年10月08日(木)]
本日,NHKのクローズアップ現代という番組が,

「どうつきあうサプリメント〜明らかになる“健康被害”〜」

と題して,サプリメント/健康食品を扱っていました。



サプリメント/健康食品の有効性/安全性に関する情報提供のあるべき姿をあらためて考えさせる内容であったと思います。



番組では,まず,サプリメント/健康食品によると思われる健康被害の1例,次に,サプリメントと医薬品の相互作用によって医薬品の効果が低下した1例を紹介し,健康保持を目的としたサプリメントによる“健康被害”に言及していました。



いずれの場合も,医療従事者や専門家の間ではよく知られたケースで,特に目新しいものではありません。




一般に,食品といえども,個人の体質による違いを考慮すれば,100%絶対に安全という食品はありません。


(極端な例ですが,通常の食品でもアレルギーによる死亡例は多数あります。

かといって,ピーナッツや蕎麦が販売禁止になるわけではありません。

医薬品との相互作用が知られている場合でも,グレープフルーツジュースが販売禁止になっているわけでもありません。)




一方,一定の食経験に基づいた安全性が示されている成分であったとしても,摂取する用量や用法,製造方法が異なると,同列に議論ができないこともあります。




今日の番組では,健康食品によるαリポ酸による健康被害として,インスリン自己免疫症候群と思われる事例について述べていました。

αリポ酸はもともと医薬品の成分ですし,ごく稀にインスリン自己免疫症候群を生じるケースもあり,日本で数例が報告されています。

(インスリン自己免疫症候群は,様々な原因で生じます。また,αリポ酸の摂取との関連では,誰でもなるわけではなくて,特定の体質を持ったごく少数の人に生じうることが知られています。
すでに,関連学会で何度か発表されており,私も複数の拙著で明記しています。また,一般的な情報提供サイトでも言及されている周知の事項です。)



番組の構成では,次のような展開でした。

(αリポ酸の摂取2週間後→)冷や汗やけいれんという症状→病院を受診してインスリン高値を指摘→膵臓の異常を疑い精密検査(インスリノーマなどの腫瘍を疑ったのだと思われます)→手術を前提にした精密検査で大学病院へ→サプリメントが原因と疑われ,摂取を中止したところ,症状が改善。


番組では,サプリメントのリスクばかりが強調されており,風評被害を生じるのでは,と危惧されます。



別の見方をすれば,これは,医療側に責任を問えるようなケースとも思われます。


つまり,初診の段階で,きちんと問診を行い,サプリメント/健康食品の摂取を把握し,かつ,それらの成分について一般的な医療従事者向けの情報を知っていれば(あるいは知らなくても調べれば),その初診の時点で,疑われる原因の一つとして,明らかになった可能性があります。



本来であれば,

(αリポ酸の摂取2週間後→)冷や汗やけいれんという症状→病院を受診して,医薬品だけではなくサプリメント健康食品の摂取状況についても持参薬として問診→血液検査でインスリン高値→インスリン自己免疫症候群を稀に生じることがあるとして知られているサプリメント成分を中止/同時にインスリノーマなどの腫瘍も想定して検査→サプリメントを中止して症状改善。

という順序になったはずです。


(あくまで,結果論にすぎませんが。)


(なお,インスリン自己免疫症候群は,原因となる薬剤やサプリメントの摂取を中止すれば,多くの場合,自然に治ることが知られています。また,分食や医薬品を投与することもあります。)





これまで,過去10年以上,代替医療の各種調査では,患者側からのサプリメント/健康食品の自己申告率は低いことが示されています。


そこで,外来初診時にはちゃんと問診してサプリメント/健康食品の利用状況を把握するように,といわれています。



ところが,今回のケースでは,初診時にサプリメントを含めた持参薬についての問診ができていないため(初診時の医療者側の対応が不十分で見逃してしまい),結果的に患者側に大きな負担を強いる結果になったという印象です。


(つまり,今日の番組を見た消費者は,「私が摂っているサプリメントも危ないかもしれない」と思われることでしょう。しかし,私から見れば,「そのような基本的なことを初診時に見落とす医療機関がまだ存在するのか」という印象です。)


(といっても,専門外の現場の医師に,そこまでの知識を求めるのは,無理なのかもしれませんが。。。)




なお,体質による個人差を考慮して,サプリメント/健康食品の製品には,

「お身体に異常を感じた場合は,飲用を中止してください」

という意味の記載があります。



あらゆる情報を限られたスペースに記載することはできませんので,必要に応じて,注意事項が記載されているわけです。




また,番組では,2つめの事例として,アミノ酸が医薬品の効果を弱めた,という例も紹介されていました。


治療薬の吸収を阻害したという例です。


相互作用による有害事象という点では,
医薬品どうし,医薬品とサプリメント,医薬品と食品などの組み合わせで,数多くの可能性が知られています。



そのため,サプリメント/健康食品の製品には,

「薬を服用中あるいは通院中の方は,主治医にご相談ください」

という内容の記載があります。


(個別の相互作用について,消費者が調べる必要はありません。病院側の仕事です。)




その他,日本医師会でもサプリメント/健康食品による健康被害に関する事例収集を行っているという紹介がありました。


プライマリーケアに関わる家庭医であれば,広く利用されているサプリメント/健康食品の有効性と安全性に関する知識は必須といえるでしょう。


(一方,うがった見方をすれば,健康増進や疾病予防において,サプリメント/健康食品の適正使用に関するエビデンスが構築されると,病気になった人を対象としたビジネスモデルは衰退することになります。消費者にとっては好ましいことですが。。。)





一般に,リスクという点では,医療用医薬品のほうがサプリメント/健康食品よりも危ない(重大な副作用が多い)のは明らかです。

(もし,お手元に医薬品があれば,その製造販売元の製薬メーカーのホームページで公開されている医療関係者向けの医薬品の添付文書をご覧ください。どの薬の添付文書にも,たくさんの副作用が列記されています。これらのリスクがありますが,病気の治療を目的とする医薬品は,リスクとベネフィットのバランスで利用されます。)



一方,健康保持や疾病予防のために用いられるサプリメント/健康食品では,医薬品よりも高い安全性が担保されるべきであるのはいうまでもありません。



そこで,有効性と安全性に関する情報提供をどのように行うか,というのはどのメーカーにとっても課題です。



消費者とのリスクコミュニケーションという視点からは,ごく稀な有害事象を羅列することが適切な情報提供とは考えられません。



また,情報の格差がある中で,消費者への適切な情報提供のあり方は,医療分野だけの問題ではありません。(例えば,金融商品などでも問題になります。)




番組では,サプリメント/健康食品の原材料に関する情報提供サイトが紹介されていました。


関係者の間では,よく知られているサイトですが,以前,ある学会で一緒になった臨床現場の先生から,あのサイトは情報の羅列だから現場ではあまり有用ではない,という意見を伺ったことがあります。



今後,個人の体質にあったオーダーメイドのサプリメント/健康食品の利用法を確立する上で,研究の推進によるエビデンスの構築に加えて,情報提供のあり方の検討も重要と考えられます。


(さらに,制度上の見直しも必要でしょう。

現在は食品として管理されているサプリメント/健康食品ですが,医薬品と食品の間のカテゴリーとして規制を行い,安全性と有効性を担保するという方策が必要と考えます。)


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医療関係者のための健康食品情報サイト【DHCサプリメント研究所】
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