分子栄養学の専門ジャーナル(電子版)に,クランベリー果汁による,大腸菌の尿路上皮細胞への付着抑制作用を示した基礎研究が,米国のグループから報告されていました。
(
Mol Nutr Food Res. 2010 Jun 21.)
クランベリーの果実(果汁)は、有効成分としてアントシアニン類やキナ酸、トリテルペン類、カテキン類、タンニン類、フラボノール類を含み、膀胱や尿道への細菌付着を抑制する作用があります。
尿路感染症の再発予防および治療に対して用いられており、これまでの臨床研究でも有効性が示されてきました。
さて,今回の研究では,原子間力顕微鏡(AFM;Atomic Force Microscope)を用いて,クランベリー果汁曝露の状態における大腸菌とヒト尿路上皮細胞の付着力がナノスケールで測定されています。
具体的には,P線毛保有大腸菌HB101pDC1あるいは,(非保有の)大腸菌HB101に対して,0, 2.5, 5, 10, 27 wt%のクランベリー果汁存在下で,大腸菌とヒト尿路上皮細胞との付着力が調べられました。
解析の結果,大腸菌HB101pDC1とヒト尿路上皮細胞の付着力は,クランベリー果汁のない状態の9.32±2.37 nNから,クランベリー果汁27 wt%存在下での0.75±0.19 nNへ,濃度依存的な低下が認められています。
また,大腸菌HB10とヒト尿路上皮細胞の付着力は,対象液中において低値(0.74±0.18 nN)であり,クランベリー果汁存在下でも有意な変化は示されませんでした(0.78±0.18 nN in 27 wt% CJC; P=0.794)。
以上のデータから,クランベリー果汁は,P線毛保有大腸菌のヒト尿路上皮細胞への付着を濃度依存的に阻害すると考えられます。
クランベリー果汁は酸味が強いため、そのままでは食用に向かず、一般に甘味料が添加されます。
尿路感染症の再発予防に対して,果汁の代わりに
クランベリーのサプリメントも広く利用されています。
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