今月の栄養学の専門ジャーナル(電子版)に,メタボリック症候群において,オメガ3系脂肪酸添加・低脂肪高複合炭水化物食の脂質代謝への影響を検証した臨床研究が,スペインのグループから報告されていました。
(
J Nutr. 2010 Jul 14.)
今回の研究は,多施設共同ランダム化比較試験として,メタボリック症候群患者を対象に,次の4群に分けて実施されています。
(LIPGENE研究の一環です。)
高飽和脂肪酸食;HSFA (脂肪エネルギー比38%,飽和脂肪酸エネルギー比16%)
高単価不飽和脂肪酸食;HMUFA (脂肪エネルギー比38%,単価不飽和脂肪酸エネルギー比20%)
低脂肪・高複合炭水化物食;LFHCC(脂肪エネルギー比28%)+オメガ3系脂肪酸1.24グラム(EPA:DHA=1.4:1.0)/日
低脂肪・高複合炭水化物食;LFHCC(脂肪エネルギー比28%)+対照脂質群1.24グラム(サンフラワーオイル)/日
12週間の介入試験の結果,
まず,食後中性脂肪値と高TGリポタンパク質のクリアランスは,HSFAやLFHCC群に比べて,HMUFA群において,より早期により速やかに生じたということです。
また,食後中性脂肪値は,他の食事群に比べて,LFHCC (n-3)において,有意に低下(P < 0.001)しました。
LFHCC(対照)では,中性脂肪(P = 0.04),高TGリポタンパク質(P = 0.01),コレステロール(P < 0.001),パルミチン酸 (P = 0.001) apo B (P = 0.002)のAUCが,介入前に比べて有意に増加しています。
一方,LFHCC (n-3)では,これらの脂質代謝指標に有意な変化は認められていません。
以上のデータから,LFHCC (n-3) およびHMUFAは,メタボリック症候群患者における脂質代謝異常を改善することが示唆されます。
LFHCCによる中性脂肪上昇作用が,オメガ3系脂肪酸とLFHCCの併用によって抑制されるというのは興味深いと思います。
(なお,この試験では,低脂肪・高複合炭水化物食と表現されていますが,脂肪エネルギー比でみると,それほど低脂肪というわけではありません。あくまで,他の試験食との比較による表現です。)
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