今月の栄養学の専門ジャーナルに,妊娠女性における体重と腸内細菌叢との関連を調べたヒト臨床研究が,スペインのグループ(Spanish National Research Council)から報告されていました。
(
Br J Nutr. 2010 Jul;104(1):83-92)
妊娠期における肥満や過剰な体重増加は,母体と胎児の健康上のリスクになります。
今回の研究では,妊娠女性における腸内細菌叢,体重,体重増加の相関が検証されています。
具体的には,妊婦50名を対象に,BMIに基づいて,正常体重(34名)あるいは肥満(16名)の2群に分け,
腸内細菌叢の解析が行われました。
その結果,肥満者では,正常体重者に比べて,
ビフィズス菌(Bifidobacterium)とバクテロイデス属(Bacteroides)数の減少,
ブドウ球菌属(Staphylococcus), エンテロバクターEnterobacteriaceae,大腸菌 Escherichia coli数の増加
が認められたということです。
また,妊娠期における大腸菌数は,正常な体重増加を示した群よりも,過剰な体重増加を示した女性において,多くなりました。
一方, ビフィズス菌とAkkermansia muciniphilaは,逆の傾向となっています。
さらに,被験者全体では,総細菌数および ブドウ球菌属数の増加は,血中コレステロール値の上昇と相関し,
バクテロイデス属数は,HDLの上昇および葉酸値の上昇,中性脂肪の低下と相関していました。
その他, ビフィズス菌数の増加は,葉酸値の増加と相関を認めています。
以上のデータから,妊婦の体重および妊娠期における体重増加と,腸内細菌叢との関連が示唆されます。
なお,腸内細菌叢と肥満との関係は,最近注目されている分野です。
たとえば基礎研究では,自然免疫に関係する受容体のノックアウトマウスにおいて肥満が認められ,腸内細菌叢に変化を認めた,という報告がサイエンス誌に発表されています。
(Metabolic Syndrome and Altered Gut Microbiota in Mice Lacking Toll-Like Receptor 5. Science 328:228-231, 2010)。
この研究では,受容体ノックアウトにより自然免疫系に生じた異常が腸内細菌叢の変化をもたらし,肥満の原因となることが示唆されます。
また,昨年のネイチャーには,ヒトにおいて,腸内細菌叢と肥満との関連を示した研究が報告されています。
(A core gut microbiome in obese and lean twins. nature 457:480-484, 2009)。
------------------------------------------------------------------
医療機関専用サプリメント【DHC FOR MEDIC】(DHCフォーメディック)
医療関係者のための健康食品情報サイト【DHCサプリメント研究所】
------------------------------------------------------------------