臨床精神医学の専門ジャーナル(電子版)に,オメガ3系必須脂肪酸による抗うつ作用を示した臨床研究が,カナダのグループから報告されていました。
(
J Clin Psychiatry. 2010 Jun 15.)
魚油などに多く含まれるEPAやDHAといったオメガ3系必須脂肪酸は,動脈硬化抑制,認知症予防,抗うつ作用といった効果が示されています。
オメガ3系脂肪酸の多い青魚の摂取が推奨される他,機能性食品素材としてサプリメントにも広く利用されています。
さて,今回の研究では,大うつ病エピソード(major depressive episode)の既往を有する患者において,比較的短期間のオメガ3系脂肪酸サプリメントの投与が,うつ病の症候を改善するかどうか,検証されています。
具体的には,カナダの精神外来患者432名(大うつ病エピソードを有する成人)を対象に,EPA 1,050 mg/日+DHA 150 mg/日あるいは偽薬が8週間投与されました。
(ランダム化二重盲検偽薬対照試験。なお,被験者の40.3%は抗うつ剤/医薬品を服用中。)
投与の結果,
うつ状態の指標の一つであるIDS-SR(自己評価Inventory of Depressive Symptomatology 30)では,
オメガ3系脂肪酸投与群と偽薬群では1.32 ポイントの違い (95% CI, -0.20 to 2.84; P = .088)が認められました。
また,MADRS(臨床医の評価によるMontgomery-Asberg Depression Rating Scale)では,
オメガ3系脂肪酸投与群と偽薬群では0.97 ポイントの違い (95% CI, -0.012 to 1.95; P = .053)が見出されています。
サブグループ解析によると,不安障害の共存症を有さない被験者(n=204)において,偽薬群に比べてオメガ3系脂肪酸投与群では,
IDS-SR(30)が3.17ポイント (95% CI, 0.89 to 5.45; P = .007),
MADRSが1.93 ポイント (95% CI, 0.50 to 3.36; P = .008)
それぞれ有意に改善が認められています。
以上のデータから,比較的短期間のオメガ3系脂肪酸サプリメントの投与であっても,一定の抗うつ効果が期待できると考えられます。
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