オリンピックのロゴについて、模倣が問題になっています。
デザイン業界の世界は良くわかりませんが、仮に、模倣ではなくて、創作であったとしても、類似の先行作品がないのかは、チェックしないものなのでしょうか。
医学生物学など、自然科学の世界では、自分が何か新しい知見を見出したという研究論文を発表する際、先行研究で報告されていないかどうかも確認します。
例えば、いま、誰かが、「ビタミンCはヒトの体内で合成できない必須栄養素である」、ということに独自に気付いたとしても、それは、既に先行研究で示されているので、オリジナルデータとして論文にはならないわけですし。
個人的には、オリンピックの招致ロゴをそのまま使えばいいと思います。
さて、本日の私的なお勉強日記です。
レドックス研究の専門ジャーナル(電子版)に、糖尿病性網膜症におけるコエンザイムQ10の抗酸化作用を示した臨床研究が、報告されていました。
(
Redox Rep. 2015 Aug 31)
コエンザイムQ10は、ATP産生作用や抗酸化作用を介して、さまざまな生活習慣病に効果が示されています。
健康な人や未病の状態では、1日あたり90mg〜110mg程度をベーシックサプリメントとして毎日摂取します。
一方、何らかの疾患があり、補完療法として用いる場合には、1日あたり100mg〜300mg程度の利用になります。
欧州の研究では、
がん患者にコエンザイムQ10を投与することで、生存率が向上したという報告もあります。
また、
臨床的には、がん患者では、放射線や化学療法といった治療あるいは終末期において、
がんに関連した倦怠感(Cancer Related Fatigue:. CRF)が高頻度に出現することが知られています。
今回の研究では、
治療中の非増殖性糖尿病性網膜症において、
コエンザイムQ10の投与、および、抗酸化療法との併用による作用が検証されました。
具体的には、
二重盲検ランダム化偽薬対照第U相臨床試験として、
・コエンザイムQ10投与群、
・抗酸化療法施行群、
・偽薬投与群の3群について、
6ヶ月間の介入が行われました。
酸化ストレスマーカーおよびニトロソ化ストレスマーカーとして、
血中の過酸化脂質、亜硝酸塩/硝酸塩が測定されました。
また、抗酸化能として、
総抗酸化能TAC、カタラーゼ活性、GPx活性も測定されています。
解析の結果、
まず、試験開始前の時点で、
血中の酸化ストレスおよびニトロソ化ストレスマーカーは、3群のいずれも有意に高値でした。
(P < 0.0001)
次に、
介入後では、
コエンザイムQ10群および抗酸化療法群では、
有意な低下が示されました。
(P < 0.0001)
また、
試験開始時の総抗酸化能は、3群のいずれも低値であったのに対して、
介入後では、
コエンザイムQ10群および抗酸化療法群において、
総抗酸化能の改善が認められました。
(P < 0.0001)
開始時のカタラーゼ活性は、正常値に比べて、3群とも有意に亢進していましたが、
(P < 0.001)
介入後には、
コエンザイムQ10群(P < 0.001)および抗酸化療法群(P < 0.0001) において、
それぞれ有意な低下を認めました。
その他、GPx活性でも、カタラーゼ活性と同様の変化(改善)が見出されました。
(P < 0.0001)
以上のデータから、
治療中の非増殖性糖尿病性網膜症において、
コエンザイムQ10および抗酸化療法は、いずれも安全であり、かつ、抗酸化能の改善、酸化ストレス障害の抑制をしめすと考えられます。
今後、臨床的意義の検証が期待される分野です。
コエンザイムQ10には、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)と還元型(=ユビキノール,ubiquinol)があります。
還元型CoQ10のほうが、酸化型CoQ10よりも体内で利用されやすいと考えられます。
(酸化型CoQ10は、体内に吸収された後、いったん還元されてから、利用されます。)
コエンザイムQ10に関するこれまでの研究の多くは、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)を用いています。
したがって、一般的には、生活習慣病の予防やアンチエイジング目的に関して、
酸化型CoQ10のユビキノンの摂取で十分な効果が期待できます。
一方、特定の疾患に対して用いる場合、あるいは、体内の生理機能が低下している高齢者の場合には、
還元型CoQ10の利用が推奨されます。
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