今月の精神医学の専門ジャーナル(電子版)に、コーヒーおよびカフェインの摂取と、うつ病リスクとの関連を調べたメタ解析が報告されていました。
(
Aust N Z J Psychiatry. 2015 Sep 2)
これまでの疫学研究によって、コーヒーの摂取による生活習慣病リスクの低下が知られています。
例えば、コーヒーの摂取による2型糖尿病リスク低下、脳卒中リスク低下、うつ病リスク低下、肝がんリスク低下、認知機能の低下抑制などがあります。
コーヒーにはファイトケミカルの1種であるクロロゲン酸が含まれており、抗酸化作用を介した生活習慣病予防効果が示唆されています。
(カフェイン以外のコーヒーの主要な成分として、フェルラ酸(ferulic acid)、カフェ酸(caffeic acid,)、クロロゲン酸(chlorogenic acid)が知られており、いずれも抗酸化作用を示します。これらの中ではクロロゲン酸が比較的多く存在します。)
今回の研究では、
コーヒーの摂取とうつ病リスク、カフェインの摂取とうつ病リスクとの関連が検証されました。
具体的には、
主要医学データベースを用いて、
(PubMed, Web of Science, China National Knowledge Infrastructure, WANFANG DATA)
1980年1月1日から2015年5月1日までの症例対照研究、コホート研究、横断研究から、
コーヒーあるいはカフェインの摂取と、うつ病との関連を示した研究が抽出されました。
観察研究11報が解析の対象となりました。
そのうち、7報の7研究、被験者330,677名ではコーヒーとうつ病の関連の解析、
7報の8研究、被験者38,223名では、カフェインとうつ病の関連の解析が行われています。
解析の結果、
摂取量が最低の群に比べて、
コーヒーの摂取による24.3%のうつ病リスク低下、
カフェインの摂取による27.9%のうつ病リスク低下という有意な相関が見出されたということです。
用量依存性の解析では、
コーヒーの摂取と、うつ病リスク低下との間に有意な線形の相関が認められました。
1日あたり1杯のコーヒーの摂取により、うつ病リスクが8%有意に低下するということです。
(RR= 0.92, 95% CI=0.87, 0.97, p=0.002)
カフェインの摂取と、うつ病リスク低下の相関は、非線形でした。
うつ病リスクの低下が顕著であったのは、1日あたり68mg超から、1日あたり509mg未満のカフェインの摂取の場合となっています。
以上のデータから、
コーヒーの摂取によるうつ病リスク低下作用が示唆されます。
これまでの疫学研究や臨床試験では、高血圧症の改善、心血管疾患(動脈硬化性疾患)リスクの低減、抗がん作用などが報告されています。
例えば、次のような研究が知られています。
コーヒー摂取による全死亡率と心血管疾患リスク低下効果:メタ解析
コーヒーの摂取と泌尿器のがんの関係@メタ解析
コーヒーの摂取による前立腺がんリスク低下作用@メタ解析
コーヒーによる肝臓がんリスク低下作用
コーヒーの摂取と前立腺がんリスクとの関連
コーヒーの摂取による口腔咽頭がんリスク低下作用
チョコレートとコーヒーの摂取と肝機能の関係@HIV-HCV重複感染者
コーヒーの摂取が女性のうつ病リスクを抑制
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