今月の神経学の専門ジャーナル(電子版)に、ビタミンD値と認知機能との関連を調べたコホート研究が、米国のグループ(University of California, Davis)から報告されていました。
(
JAMA Neurol. 2015 Sep 14.)
ビタミンD欠乏は、認知機能の低下や認知症発症にかかわると考えられています。
今回の研究では、
人種的に多様な高齢成人において、
ビタミンD値と認知機能との関連が検証されました。
具体的には、
2002年2月と2010年8月の間に、
382名を対象に、
血中ビタミンD値(25-OHD)と認知機能が測定されました。
ビタミンD値は次のように分類されています。
欠乏;12 ng/mL未満
不十分;12以上 20 ng/mL未満、
正常範囲;20以上50 ng/mL未満
高値; 50 ng/mL以上
(ng/mLからnm/Lへの変換は2.496を乗数とする)
解析の結果、
まず、試験開始時では、
被験者382名(平均年齢75.5歳)の内訳は、
女性61.8%、
白人41.4%、黒人29.6%、ヒスパニック25.1% 、その他3.9%でした。
また、
試験開始時での診断は、
認知症17.5%、
軽度認知機能障害(MCI)32.7%
認知機能は正常49.5%
でした。
平均ビタミンD値は、
19.2 ±11.7 ng/mL
であり、
被験者の26.2%が欠乏、35.1%が不十分とされています。
特に、黒人とヒスパニックでは、白人に比べて低値でした。
((17.9 [15.8] and 17.2 [8.4] vs 21.7 [10.0] ng/mL,; P < .001 for both)
また、
MCI群および正常群に比べて、
認知症群では、血中ビタミンDが有意に低値でした。
(16.2 [9.4] vs 20.0 [10.3] and 19.7 [13.1] ng/mL,; P = .006)
平均追跡期間は、
4.8 ±2.5年です。
交絡因子(年齢、性別、教育、人種、BMI、採血の季節、apoE4遺伝子多型)で補正後、
認知機能の指標(episodic memory and executive function)に関して、
ビタミンD欠乏群および不足群では、
正常群に比べて、
認知機能の有意な低下が見出されたということです。
・欠乏群 (episodic memory: β = -0.04 [SE = 0.02], P = .049; executive function: β = -0.05 [SE = 0.02], P = .01)
・不足群 (episodic memory: β = -0.06 [SE = 0.02], P < .001; executive function: β = -0.04 [SE = 0.02], P = .008)
なお、意味記憶(semantic memory)や視空間認知能力(visuospatial ability)の低下と、ビタミンD値では有意な相関は見出されませんでした。
以上のデータから、
ビタミンD不足が認知機能低下のリスクと相関することが示唆されます。
今後、ビタミンDサプリメント投与といった介入研究による認知機能への検証が期待される分野です。
機能性食品・サプリメントの中で、ヒト臨床研究によって、認知症改善作用が示されているのは、次の成分です。
イチョウ葉エキスによる認知症への効果:メタ解析
イチョウ葉エキス
イチョウ葉エキス製剤による認知症の症状改善作用
イチョウ葉エキスによる認知症改善効果@ドイツ
イチョウ葉エキスの有効性と安全性
イチョウ葉エキス20年間摂取による認知機能低下抑制作用
イチョウ葉エキスと認知症治療薬のシナジー
PS(ホスファチジルセリン)サプリメント
PS(ホスファチジルセリン)による認知機能改善作用
エクストラヴァージン(バージン)オリーブオイル
エクストラバージンオリーブオイルによる認知症予防効果
大豆イソフラボンによる認知機能改善効果@メタ解析
・ビタミンB群
ビタミンB群投与による脳萎縮(灰白質萎縮)抑制効果と認知機能低下抑制効果
脳萎縮進行抑制効果を示した臨床研究
オメガ3系必須脂肪酸とαリポ酸によるアルツハイマー病の進行抑制効果
一般に、認知機能への効果を期待する場合には、
ビタミンB群、オメガ3系脂肪酸(
EPAや
DHA)、
イチョウ葉エキスといったサプリメントを比較的長期間(数ヵ月以上)に利用することが必要と考えられます。
また、ウコン・クルクミンによる認知症改善作用も報告されています。
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