今月のリハビリテーション医学の専門ジャーナル(電子版)に、グルコサミン塩酸塩+コンドロイチン+クルクミンの複合サプリメントによる変形性膝関節症の症状改善作用を示した臨床研究が、イタリアのグループ(Campus Bio-Medico University)から報告されていました。
(E
ur J Phys Rehabil Med. 2016 Mar 3)
グルコサミンは、変形性膝関節症などの関節疾患に広く利用されているサプリメントです。
今回の研究では、
グルコサミン塩酸塩+コンドロイチン+クルクミンの複合サプリメント(CartiJoint Forte)による変形性膝関節症への作用が検証されました。
具体的には、
多施設共同ランダム化二重盲検臨床試験として、
2か所の大学病院のリハビリテーション部の外来にて、
53名の変形性膝関節症患者を対象に、
理学療法に加えて、
・複合サプリメント(CartiJoint Forte)併用投与群(N=26)
・偽薬投与群(N=27)
の2群について、8週間の介入が行われています。
両群とも、試験期間中に20セッションの理学療法を受けています。
主アウトカムは、運動時及び安静時における疼痛(VAS)です。
副アウトカムは、WOMAC、LI、膝ROM、炎症マーカーです。
試験開始時、8週間、12週間の3点で測定が行われています。
3名が試験を脱落しました。
解析の結果、
まず、
安静時の疼痛(VAS) は、投与前と比べて、8週間後及び12週間後にいずれも有意に減少していました。
(F=13.712; p=.0001)
ただし、両群間に有意差はありませんでした。
(F=1.724; p=.191)
次に、
動作時の疼痛(VAS)は、
介入群と時間との間に有意な相関が認められ、
(F=2.491; p=.032)
(F=17.748; p=.0001)
8週間の時点での介入群(サプリメントとの併用投与群)において、
疼痛軽減作用が顕著に認められたということです。
(F=3.437; p=.045)
膝関節機能の総合評価指標(Lequesne Index)では、
試験開始時に比べて、8週間後及び12週間後のいずれにおいても、両群で有意な改善が認められ、
(F=9.535; p=.0001)
特に、サプリメントの併用群において、12週間の時点で、より顕著な改善が認められました。
(F=7.091; p=.009)
なお、炎症関連マーカー(CRPなど)では有意な変化は検出されませんでした。
以上のデータから、
変形性膝関節症患者において、
理学療法と併用により、
グルコサミン塩酸塩+コンドロイチン+クルクミン含有複合サプリメントによる症状改善作用が示唆されます。
日本で利用されているグルコサミンは、この研究で用いられたのと同じグルコサミン塩酸塩です。
(硫酸塩は日本では医薬品として区分されるため。)
なお、グルコサミンは、抗炎症作用もありますが、NSAIDsとの違いは、関節の構造変化作用を介して、変形性膝関節症のリスクを軽減することです。
グルコサミン/コンドロイチンによる膝関節構造変化への働き:6年間のフォローアップ研究
グルコサミンは、変形性膝関節症などの関節疾患に広く利用されているサプリメントです。
グルコサミンの有用性に関するエビデンス
作用メカニズムとして、アミノ糖であるグルコサミンが関節軟骨の成分であることから、構成成分を経口摂取することによる直接的な修復機構が想定されていました。
一方、最近の研究では、グルコサミンやコンドロイチンは、情報伝達機構における調節因子であることが示されており、変形性膝関節症に対する改善効果のメカニズムとして、構成成分自体を直接摂取する作用というよりは、シグナル伝達物質を摂取することによる作用が考えられています。
膝OAなどの変形性関節症に対して、
サプリメントでは、
グルコサミンやコンドロイチンが最もエビデンスが豊富であり、欧州の学術団体EULARではグレードAの推奨になっています。
(一方、ACRではGAIT1のみを解析対象としたため、偽陰性データのバイアスによってネガティブになっています。)
2014年以降に発表された最新の研究―MOVES研究やLEGS研究--では、
グルコサミンやコンドロイチンの効果が示されています。
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