抗生物質の利用とうつ病との関連を調べた研究が、イスラエルのグループから報告されていました。
(
J Clin Psychiatry. 2015 Nov;76(11):1522-8.)
腸内細菌叢(腸内フローラ)は、整腸作用だけではなく、免疫機能の維持や抗炎症作用など健康維持に重要な役割を果たしていることが明らかになっています。
食生活などの環境要因によって、腸内細菌叢に乱れが生じると、脂肪酸などの代謝の変化や慢性炎症の惹起により、
肥満、脂質異常症、アレルギー疾患、炎症性疾患、神経疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病)、精神疾患(うつ病や自閉症ADHD)のリスクが高まることが示唆されています。
腸内細菌叢のバランスの異常(構成する菌種の異常)は、ディスバイオーシス(dysbiosis)と呼ばれます。
最近では、ディスバイオーシスを原因とする各種疾患に対する治療として便移植も行われるようになりました。
腸内細菌叢の乱れ・ディスバイオーシスを生じる状態に、抗生物質の服用があげられます。
先行研究では、
抗生物質の服用が多いほど乳がんリスクが上昇
というデータが示されています。
今回の研究では、
抗生物質の服用と、うつ病、不安症、精神病(psychosis)との関連が検証されました。
具体的には、
3個の症例対照研究として、
1995年から2013年までの英国の医学記録から、
うつ病患者202,974名、
不安症患者14,570名、
精神病患者2,690名と、
対照群(それぞれ803,961名、57,862名、10,644名)
が対象となり、
(被験者は15歳から65歳)
各クラスの抗生剤の服用状況が調べられました。
診断前の肥満や喫煙、飲酒、感染症の既往などが交絡因子として調整されています。
解析の結果、
まず、
全てのクラスの抗生剤に関して、単回の治療コースの服用と、
うつ病リスク上昇との間に有意な相関が認められました。
例えば、
ペニシリン類では23%上昇、
(1.23, 95% CI, 1.18-1.29)
キノロン類では25%上昇
(1.25, 95% CI, 1.15-1.35)
でした。
次に、
複数の回数(治療コース)の抗生剤の投与は、
ペニシリン類の場合、
2-5回では40%のリスク上昇
6回以上では56%のリスク上昇が認められたということです。
同様の相関が、
不安症のリスクと、ペニシリン類およびスルホンアミド類の服用との間にも見出されています。
ペニシリン類の単回の治療コースでは17%のリスク上昇、
6回以上では44%のリスク上昇でした。
一方、精神病のリスクと、抗生剤の服用との間に有意な関連は認められませんでした。
その他、
抗真菌薬の服用は、
単回の治療コースでは、うつ病と不安症のリスクの軽度上昇が認められましたが、
複数回の治療コースでは相関は見出されませんでした。
以上のデータから、
抗生剤の服用と、うつ病リスク上昇および不安症リスク上昇との関連が示唆されます。
腸内細菌叢(腸内フローラ)を健康に保つ(善玉菌を増やし維持する)には、
・プロバイオティクスの摂取、
・プレバイオティクスの摂取
が重要です。
腸内細菌叢の改善では、食物繊維の有用性はよく知られています。
また、オリゴ糖は、善玉菌を増やす効果がありますので、
乳酸菌と一緒にオリゴ糖もとることが大切です。
乳酸菌は、ベーシックなサプリメントとして利用が推奨されます。
様々な乳酸菌が製品化されていますので、自分にあった菌種を選ぶことが大切です。
具体的には、1ヶ月ほど試してみて、整腸作用も含めて体調をみるようにします。
(整腸作用は、乳酸菌の摂取後数日間の間に変化を感じると思います。もし、軟便あるいは下痢傾向になってしまうのであれば、他の菌種に変更します。
また、1-3ヶ月から数ヶ月間のサイクルで菌種をローテーションしてもいいでしょうし、複数の種類を同時にとることも大丈夫です。
ヨーグルトなどの発酵食品でもいいのですが、数百グラムを毎日食べるのは大変ですし、
確実に乳酸菌を摂るには、サプリメントの利用が手軽で続けやすいと思います。
プロバイオティクスは、様々な有用性が示されています。
最近の研究では、次の報告があります。
プロバイオティクスによる脂質異常症改善効果:メタ解析
プロバイオティクスによるアトピー性皮膚炎の予防効果:メタ解析
プロバイオティクス摂取による脂質代謝改善作用:メタ解析
DHCでは、プロバイオティクスとして、
ビフィズス菌+オリゴ糖
生菌ケフィア
DHC自分でつくるケフィアヨーグルト
複合サプリメント(グッドスルー)
などを製品化しています。
また、プレバイオティクスとしては、
食物繊維
があります。
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