コーヒーを多く飲む人では肝硬変の発症率が低いというデータが、アメリカの医学専門誌「
内科学アーカイヴス」(06年6月12日号)に掲載されていました。日本のメディアでも報道されていましたので、ご覧になった方も少なくないと思います。
これは、観察研究という方法で行われた、米国カリフォルニア州での疫学調査です(
Klatskyら)。125,580人を対象に、1978〜85年のライフスタイルについて健康調査をしておき、その後の病気の発症が調べられました。その結果、330人が肝硬変(うち199人がアルコール性肝硬変、131人が非アルコール性肝硬変)を発症。コーヒーの摂取量との関連を検討したところ、アルコール性肝硬変の場合、1日4カップ以上のコーヒーを飲む人では、飲まない人に比べて発症リスクが8割も少なかったということです。また、非アルコール性肝硬変では、1日4カップ以上の人でリスクが3割減少という結果です。一方、お茶の摂取量と肝硬変の発症リスクについて、相関は認められていません。
でも、観察研究ですので、コーヒーの摂取量と肝硬変の発症リスクに「相関関係」があったとしても、「因果関係」があるのかどうかは、よくわかりません。一応、この論文の結論では、「今回の疫学研究のデータは、コーヒーの成分に、肝硬変、特にアルコール性肝硬変を防ぐ効果があるという仮説をサポートする」となっています。
コーヒーの摂取と肝臓の病気といえば、昨年、日本の研究グループから、コーヒーの摂取が多いと肝臓がんの発症が少ないというデータも発表されています。ただし、こちらのデータも、疫学調査です。単に、肝臓の病気になると、コーヒーを飲みたくない人が多いだけなのかもしれないという反論もできます。
このような疫学調査は面白いデータではありますが、やはり、アルコール性肝硬変の予防には、コーヒーを飲むことではなく、飲酒を調節することが確実です。また、日本人に多いウイルス性肝炎の場合には、標準治療を受けることが大切です。