サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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がんの補完代替医療ガイドブック [2006年06月27日(火)]
今日、「がんの補完代替医療ガイドブック」という冊子をぱらぱらとめくっていました。
この冊子は、編集が[厚生労働省がん研究助成金「がんの代替医療の科学的検証と臨床応用に関する研究」班]、監修が[日本補完代替医療学会]となっています。

冊子自体は、だいぶ前に送られてきたのですが、目を通す時間がなく、今日になって、ざっとみてみました。

それで、第一印象としては、補完代替医療に対する一般的な考え方については、わかりやすい説明にはなっていますが、肝心のがんについては、一般消費者の方にとって役立つ情報は少ないという感じをもちました。
(編集にかかわった医師や研究者の最大公約数的な意見を集約した結果だから、仕方ないのかもしれませんが。)

この小冊子は、米国で発表された、いくつかの総説を種本にして、表面的なことを一般向けにまとめているのですが、データが新しくないという欠点があります(他に、校正ミスによる誤字もあります)。例えば、米国では4年も前に、製品が回収され、販売中止になったハーブ複合剤が、この小冊子では、表に取り上げられています。
その他、独自の工夫としては、がんに対して利用されることのあるサプリメントをいくつか取り上げ、簡単な説明を加えています。

この冊子について、評価できる点としては、がんに対する補完代替医療に対して、過剰な期待を抱かないように、研究データの臨床的意義や、正しい情報の集め方についてのヒントが掲載されていることです。

逆に、問題と感じるのは、まだまだ議論の多い分野であり、専門化向けの診療ガイドラインさえ設定されていないのに、あたかも専門家のコンセンサスが得られた上でまとめられた、一般向けガイドラインのような誤解を生じるという点です(編集;厚生労働省なんとか、、監修:なんとか学会、となっていますので)。
ただ、冊子のカバー表紙には「考えるための方法を提供するもの」「決して個人の責任で実施するさまざまな療法を制限するものではなく、また、特定の療法を勧めるものでもありません」と明記されていますので、あまり目くじらを立てるほどでもないのかもしれません。

もちろん、悪質な健康食品バイブル本商法や訪問販売などに騙されないようにするためには、有用な小冊子だと思います。


私見ですが、現状では、いわゆる抗ガンサプリメントに関しては「まだ十分なエビデンスがない」という見解になると考えます。
ただし、「エビデンスがない」ということは、「効果がない」ということとは別です。
(ときどき、エビデンスがない=効果がない、という誤解があるようですが、両者は別です。)

がんと補完代替医療については、いろいろな立場の医師や研究者が、さまざまな考えをもっています。明らかな誤解や知識不足に基づく意見を聞くこともありますが、一般には、誰が正しいとか、正しくないとかを判断するまでの研究データはそろっていないといっていいでしょう。

現在、米国では、がんに対して、「統合腫瘍学」が認知されつつあります。
2004年にはSIO( Society for Integrative Oncology) が組織され、ニューヨークにおいて第1回統合腫瘍学国際カンファレンスが開催されました。SIOの主要なメンバーは、ハーバード大学、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターといった現代西洋医学の腫瘍学における代表的な機関に属しています。さらに、米国国立がんセンター(NCI)には補完代替医療事務局OCCAM(Office of Cancer Complementary and Alternative Medicine)が設置されており、年間1億2,000万ドル以上の研究費が、腫瘍学分野における補完代替医療研究に配分されています。
既に、米国などでは、「がんと補完代替医療」とか「がん治療における西洋医学と代替医療」といった議論ではなく、「がんと統合医療」あるいは「統合腫瘍学」という考えが主流になったといえるでしょう。

SIOやNCI(米国国立がん研究所)など、欧米における統合医療の現状については、『日本医事新報』(No. 4278(2006年4月22日号)に[「統合医療」の現状と課題](蒲原聖可)という文章を書いていますので、医学系図書館などでご覧いただけると幸甚です。

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