2006年5月、本邦の内閣府食品安全委員会は、大豆イソフラボンの安全な一日摂取目安量の上限値として、70〜75mg/日(大豆イソフラボンアグリコン換算値)を設定しました。
これは、イタリアでの臨床試験において、閉経後女性を対象に大豆イソフラボン錠剤を150mg/日の用量にて、5年間投与した結果、子宮内膜増殖症の発症が投与群で有意に高かったことから、大豆イソフラボン(150mg/日)が、ヒトにおける健康被害の発現が懸念される「影響量」と推測したことによります。
そして、試験対象者が閉経後女性のみであることや個人差等を考慮し、150mg/日の半量である75mg/日(大豆イソフラボンアグリコン換算値)を臨床試験に基づく安全な摂取目安量の上限値としました。
大豆イソフラボンは、非配糖体(=アグリコン型イソフラボン)と配糖体(=グリコシド型)があります。食材としての大豆および大豆製品中では、ほとんどがグリコシド型として存在します。
大豆イソフラボンの機能性について、例えば、大豆の消費量が多いアジア人女性では、白人女性と比べて乳がんが少ないという疫学データが知られています。
一方、大豆イソフラボンは、その女性ホルモン様作用のために、ホルモン感受性疾患においては好ましくない働きを示すのではないかという仮説があります。
この仮説のため、摂取上限値が設定されました。
ただし、乳がんの発症や再発における大豆イソフラボン投与の臨床的意義には現在でも研究者の間で議論があり、明確な結論は得られていません。
比較的多くの研究者で一致しているのは、「通常の食品(大豆製品)として大豆イソフラボンを摂取する際には、特に問題は生じないだろう」という点です。
更年期障害や乳がんと、大豆イソフラボンの関係については、基礎研究から疫学調査、臨床試験まで数多く報告されていますが、病気の発生には人種差や個人差があり、イソフラボンの最適な用法・用量はまだよくわかりません。
現在、大豆イソフラボンのサプリメントとして、グリコシド型(配糖体glycoside)を含有する製品と、アグリコン型を主成分とするものがあります。グリコシド型に比べて、アグリコン型は、体内に吸収されやすく、血中濃度の上昇をもたらします。この血中濃度の変動は、通常の食材の摂取では得られないため、臨床的意義(安全性と有効性)はわかりません。
アグリコン型の高用量・長期投与による安全性は明らかではありません。
将来、個別化医療が確立され、個人の遺伝素因に基づいたオーダーメイドの食事療法が可能になれば、アグリコン型を投与することによる予防医学ができるかもしれません。あるいは逆に、アグリコン型の投与では血中濃度の急峻な上昇をもたらすため、エストロゲン様作用が好ましくない結果を生じるという結論になるかもしれません。いずれになるかは、今後の研究結果次第でしょう。 (これらは、あくまで理論的な可能性についての私見です)。
一方、食材に存在する構造であるグリコシド型であれば、安全性は確立されていると考えられます。サプリメントを利用する際、通常の食品からの摂取に準じた量をグリコシド型で摂る場合には問題はないでしょう。
では、サプリメントはどのように利用すればいいのでしょうか?
DHCの「大豆イソフラボン」は、大豆製品中に存在するのと同じグリコシド型(配糖体)のイソフラボンです。1日あたりの摂取目安量は、アグリコン型に換算すると約25mgになります。
「大豆イソフラボン」サプリメントの利用法として、例えば、大豆製品(納豆など)を摂った日にはサプリメントは摂らずに、大豆製品を食べなかった日にサプリメントを摂るといった方法が考えられます。